カナダ・University of TorontoのSuzanne Schuh氏らは、2011~19年に同国の7施設で中等症~重症喘息の小児816例を対象に行われた二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)の二次解析を実施。その結果、救急治療室(ER)において初期安定化治療の後にマグネシウム(Mg)静注療法を受けた患児では、受けなかった患児と比べて入院率が高かったとJAMA Netw Open2021; 4(7): e2117542)に発表した。

Mg静注で入院のリスク10倍、軽症例でも8倍

 同試験では、ステロイド全身投与およびアルブテロール・イプラトロピウム吸入投与による初期治療の1時間後において、小児呼吸評価尺度(Pediatric Respiratory Assessment Measure;PRAM)スコア5以上の中等症~重症呼吸困難が持続する2~17歳の小児816例(年齢中央値5歳、男児63.4%)を登録。アルブテロール3回吸入に加えて硫酸Mgを吸入投与する群(409例)とプラセボ(生理食塩液)を吸入投与する群(407例)にランダムに割り付けた。治療終了後(ランダム化後1時間)に帰宅・入院の判断および治療方針の決定を行い、ER退室前に215例(26.3%)にMg静注療法(40~75mg/kgを30分間持続静注)を行った。

 主要評価項目は、喘息による入院とした。解析の結果、入院率は全体で44.6%、Mg静注療法を受けた患児では88.4%、受けなかった患児では29.0%だった。

 多変量調整後の解析では、Mg静注療法を受けた患児は受けなかった患児と比べて入院のリスクが約10倍と有意に高かった〔調整後オッズ比(aOR)9.76、95%CI 4.58~20.77、P<0.001〕。

 ER退室時のPRAMスコアが3以下(帰宅可能と判断される軽症喘息に相当)の患児417例に限定した解析においても、Mg静注療法を受けた患児は受けなかった患児と比べて入院のオッズが8倍超と有意に高かった(aOR 8.52、95%CI 2.96~24.41、P<0.001)。

Mg静注と入院の関連性は経時的に低下

 Mg静注療法後の入院には、同療法の実施時期が関連していた。入院のaORは、2011~16年実施の22.67(95%CI 6.26~82.06、P<0.001)に対し、2017~19年実施では4.19(同1.99~8.86、P<0.001)と約5分の1に低下した。Schuh氏らは「低下の理由は不明だが、救急医の間でMg静注療法後に帰宅と判断することに対する安心感が高まっている傾向を反映している可能性がある」と考察している。

 さらに、Mg静注療法後の入院とER退室時のPRAMスコア(1ポイント上昇当たりのaOR 2.24、95%CI 1.89~2.65、P<0.001)、アルブテロール追加投与(aOR 5.94、95%CI 3.52~10.01、P<0.001)との独立した関連が認められた。

 以上を踏まえ、Schuh氏らは「難治性小児喘息に対するMg静注療法は入院に関連することが示され、帰宅可能と判断される軽症例でも同様の関連が認められた」と結論している。

有効性のエビデンスの質は低い

 重症小児喘息に対してはステロイド全身投与、β2刺激薬の吸入投与、抗コリン薬による治療が推奨されるが、これらの治療薬に抵抗性を示す場合もあり、Mg静注療法が第二選択の治療法となる可能性がある。同療法は多くの喘息管理ガイドラインにおいて重症小児喘息に対する補助療法として推奨されているが、その有効性に関するエビデンスは、結論が異なる3件の小規模RCT(計115症例)のシステマチックレビュー(Cochrane Database Syst Rev 2016;4:CD011050)に基づいている。

 ただし同レビューでは、①ランダム効果モデルによる再解析ではMg静注療法と入院との関連が認められない②再入院などの安全性に関するデータを検討していない③Mg静注療法による入院率低下の可能性を報告した2件の研究は、小児喘息による救急搬送例の大部分を占める未就学児を除外しているーとの理由から、Mg静注療法の有効性に関するエビデンスの質は低いと指摘している。

 このため、Schuh氏らは「難治性小児喘息の治療におけるMg静注療法の役割を明らかにするには、同療法の有効性と安全性について、さらなる研究が必要であろう」と付言している。

(太田敦子)