心房細動(AF)患者に対する抗凝固療法は、脳卒中予防が期待されるものの、服薬の継続が難しいことが指摘されている。オランダ・Leiden University Medical CenterのMyrthe M.A. Toorop氏は、虚血性脳卒中予防のために直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を新規に開始した非弁膜症性AF(NVAF)患者を対象に、経口抗凝固薬(OAC)服薬遵守と転帰について検討した同国のコホート研究の結果をEur Heart J(2021年7月16日オンライン版)に発表した。

解析対象はDOAC-naïveの成人NVAF患者9万3,048例  

 同研究の対象は、2013年1月1日~18年9月30日に虚血性脳卒中予防の目的でDOACの服用を開始したオランダのNVAF患者35万6,676例。過去にDOAC処方歴のある者などを除外し、DOAC-naïveの成人9万3,048例を解析対象とした。  

 評価項目は、①虚血性脳卒中と虚血性脳卒中関連死の複合②虚血性脳卒中③全死亡-で、DOAC投与状況などの背景因子とアウトカムの関連を調べるため、DOACの初回処方日から評価項目の初回イベントまたは死亡の発生、あるいは研究期間終了時(2018年12月31日)まで追跡した。  

 なお服薬遵守については、同国の1回の最長処方期間(90日間)を考慮して100日を目安とし、最後の処方日が2018年10月1日~12月1日の間であれば「良好」(最後の処方日から100日以内に死亡した患者を含む)、2018年9月30日以前であれば「不良」と定義した。解析にはDOAC処方後にビタミンK拮抗薬(VKA)に切り替えた患者も含めた。

男性、若年、高齢、脳卒中既往なしなどの因子を有する患者で服薬遵守不良  

 対象のベースライン時の主な患者背景は、平均年齢が72.2歳、男性が56.2%、ネイティブのオランダ人が87.5%。VKAから切り替えた症例が28.4%、永続性AF例が25.6%、CHA2DS2-VAScスコアの平均が2.8点、同スコア2点以上の割合が75.7%であった。  

 先述の定義に基づき、初回DOAC処方後1、2、3、4年時における服薬遵守が良好な割合を調べた結果、それぞれ88.1%(95%CI 87.9~88.3%)、82.6%(同82.3~82.9%)、77.7% (同77.3~78.1%)、72.0% (同71.5~72.5%)と徐々に低下していた。  

 服薬遵守不良の背景因子を見ると、①男性〔ハザード比(HR)1.25、95%CI 1.21~1.29〕②若年および高齢(65~74歳を参照とした場合の18~34歳、35~44歳、45~54歳、55~64歳、75~84歳、85歳以上)③発作性AF(HR 1.15、95%CI 1.06~1.25)④VKA投与歴なし(同1.50、1.45~1.56)⑤脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)既往なし(同1.40、1.32~1.49)➅現在婚姻関係にある者を参照とした場合の婚姻関係なしまたは独身(同1.72、95%CI 1.63~1.81)および離婚済み(同1.29、1.23~1.35)⑦CHA2DS2-VAScスコア2点超を参照とした場合の0点(同3.35、3.21~3.48)および1点(同1.43、1.37-1.48)-などが挙げられた。  

服薬遵守不良の集団で虚血性脳卒中と虚血性脳卒中関連死の複合のリスクが79%増  

 年齢、性、AFタイプ、VKA投与歴、脳卒中/TIA既往歴、標準化した世帯収入を調整し、OAC服薬遵守の良好な集団とに対する不良集団における各評価項目のHRは、虚血性脳卒中と虚血性脳卒中関連死の複合が1.79(95%CI 1.49~2.15)、虚血性脳卒中が1.58(同1.29~1.93)、全死亡が2.32(同2.18~2.47) といずれもリスクが高かった。これらの結果は、ベースライン時のCHA2DS2-VAScスコアが2点以上の集団では一貫していた一方で、2点未満の集団ではHAS-BLEDスコアを調整後の虚血性脳卒中と虚血性脳卒中関連死の複合(HR 0.37、95%CI 0.20~0.69)、および虚血性脳卒中(同0.38、0.20~0.70)リスクが低下していた。  

 以上の結果を踏まえ、Toorop氏らは「DOAC-naïveのNVAF患者では、4年後のOAC服薬遵守率が約70%まで低下し、そのことが虚血性脳卒中のリスクを高めていたと考えられる。今回抽出された服薬遵守が不良な背景因子を有する患者に治療介入することで、服薬遵守の改善に役立つ可能性がある」とまとめた。また、CHA2DS2-VAScスコア2点未満の集団で虚血性脳卒中とその関連死のリスクが低かったことについて、「他の脳卒中予防法である左心耳閉鎖術施行などのため、抗凝固療法が短期間となった可能性があり、結果的にリスクが低かったのではないか」と考察している。

編集部