新型コロナウイルスの感染状況が埼玉、千葉、神奈川の3県でも深刻化し、政府は28日、東京都に発令中の緊急事態宣言を首都圏に拡大する検討を迫られた。ただ、発令から2週間余りが経過した都内でも感染拡大に歯止めがかからず、手詰まり感は否めない。東京五輪での日本勢の活躍でお祭り気分が広がる中、さらなる行動自粛要請の効果に懐疑的な見方も根強い。
 西村康稔経済再生担当相は28日の衆院内閣委員会で、今の感染状況に「極めて強い危機感を有している」と表明。緊急事態宣言の要請に傾く3県の動きを踏まえ、「必要とあれば機動的に対応したい」と前向きに検討する考えを示した。
 政府内ではもともと、宣言拡大に慎重論が強かった。3県での対策強化をめぐる菅義偉首相と西村氏ら関係閣僚の27日の協議では、出席者の一人が宣言発令を唱えたものの、他の閣僚がそろって反対。政府関係者はその理由を「五輪中止論が出てくることも考えられる」と推し量った。
 だが、28日になると、都内の新規感染者は3177人と過去最多を更新。3県の感染状況も、宣言発令の目安となる「ステージ4」に既に達しており、とりわけ神奈川では新規感染者が1051人と初めて大台に乗った。首相はこの日、関係閣僚と改めて対応を協議。この後、出席者の一人は「各県の状況をもう少し分析してからだ」と、宣言発令に含みを持たせた。
 ただ、宣言を出したところで、どこまで効果を挙げられるかは見通せない。対策の肝とされる飲食店での酒類提供の停止について、都内では「協力を得られなくなっている」(首相周辺)のが実情だ。政府高官は「宣言を出しても効果がないことは、東京を見れば分かるはずだ」と認め、別の高官も「宣言は意味がない」と悲観的だ。
 五輪を開きつつ、人々に行動自粛を迫る難しさもある。28日の衆院内閣委で、共産党の塩川鉄也氏は「五輪は国内の人流を促進して感染を拡大する懸念がある」と指摘。「一方で国民に自粛を求めながら、他方で五輪という世界最大の祭典を行うというのは大きな矛盾だ」と政府の対応を厳しく批判した。
 ワクチン接種で先行する欧米では、感染者数は多くても重症者や死者の数は抑えられているとされ、国内でもこうした面を強調すべきだとの意見が政府・与党内に出ている。もっとも、首相は国民に不断の協力を求めるべき立場にありながら、メッセージを発することに後ろ向きだ。28日には内閣記者会の取材要請を拒み、官邸を出る際の記者団の問い掛けにも無言を貫いた。 (C)時事通信社