新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染予防のワクチン接種が世界的に進展しているが、接種を完了したにもかかわらずSARS-CoV-2に感染する「ブレークスルー感染」の発生が一部で報告されている。イスラエル・Sheba Medical CenterのMoriah Bergwerk氏は、同国でファイザー製メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン・トジナメランを2回接種した医療従事者におけるブレークスルー感染の発生率を調査。2回接種後の検査陽性率は2.6%だったと、N Engl J Med2021年7月28日オンライン版)に報告した。

2021年1〜4月の接種者データを収集

 イスラエルは他国に先駆けてトジナメランの接種を開始したが、最近はインド型変異(デルタ)株の流行やブレークスルー感染の発生などで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延が再拡大の傾向にあり、3回目のワクチン接種を行う「ブースター接種」も検討されている。

 イスラエル最大の医療機関であるSheba Medical Centerでは、全医療従事者1万2,586人のうち、2020年12月19日〜21年4月28日に91%がトジナメランの2回接種を完了している。そこでBergwerk氏は、2021年1月20日〜4月28日の14週分の同施設のデータを収集し、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査などでブレークスルー感染例を特定。その上で、ブレークスルー感染例と非感染例を照合し、一般化推定方程式(GEE)で中和抗体の幾何平均抗体価(GMT)を予測した。

感染者では接種後抗体価が低値

 検討の結果、トジナメランの2回接種を完了した医療従事者1万1,453例中13.1%(1,497例)がRT-PCR検査を受け、そのうちブレークスルー感染が2.6%(39例:看護師18例、管理・保守作業員10例、その他のメディカルスタッフ6例、医師5例)に認められた。多くが軽症あるいは無症候性だったが、一部で上気道うっ血、筋肉痛、嗅覚・味覚の喪失、発熱・悪寒といった症状があり、19例では診断から6週後も咳、倦怠感などCOVID-19の後遺症(Long COVID)が認められた。なお、検出されたSARS-CoV-2は85%が英国型変異(アルファ)株だった。

 SARS-CoV-2検出前1週間以内(感染周辺期)における中和抗体のGMTは、ブレークスルー感染例で192.8(95%CI 67.6〜549.8)と、非感染例の533.7(同408.1〜698.0)より低かった(症例対照比0.361、95%CI 0.165〜0.787)。一方、トジナメラン2回接種後1週間以内のピーク時においても、ブレークスルー感染例でGMT152.2(95%CI 30.5〜759.3)と、非感染例の1,027.5(同761.6〜1,386.2)より低かった(症例対照比0.148、95%CI 0.040〜0.548、)。

図. 感染周辺期およびワクチン接種後ピーク時の中和抗体価

N Engl J Med 2021年7月28日オンライン版)

 以上の結果について、Bergwerk氏は「トジナメランは極めて効果的である一方、まれにブレークスルー感染が生じることが分かった」と結論。「ブレークスルー感染例のほとんどが軽症あるいは無症候性だったが、一部で持続的な症状も発生した」と指摘した。

(平山茂樹)