高血圧患者に対するアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)投与により、認知症リスクの抑制を示唆する報告がある。そうした中、台湾・Linkou Chang Gung Memorial HospitalのChi-Hung Liu氏らは、高血圧を合併する糖尿病患者へのテルミサルタン投与と認知症リスクの関連を検討。結果を、PLoS Med2021; 18: e1003707)に報告した。

6万5,000例超を解析

 ARBによる認知症リスクの抑制効果が報告される中、PPAR-γ活性化作用を有するテルミサルタン投与による効果は不明であることから、Liu氏らは一般人口を対象にコホート研究を実施した。

 対象は、1997年1月1日〜2013年12月31日に2型糖尿病と診断され、台湾の国民健康保険データベースに登録された216万6,944例のうち、高血圧を合併しARBを服用中の6万5,511例。脳卒中、外傷性脳損傷、認知症既往例、50歳未満やARBの長期服用が確認できない症例などは除外した。

 傾向スコアマッチングにより、1:4でテルミサルタン群(2,280例)とテルミサルタン以外のARBを使用する対照群(9,120例)に割り付け、認知症およびアルツハイマー病(AD)の診断、全死亡などを比較した。主な背景は、平均年齢がテルミサルタン群は62.4歳、対照群は62.38歳、男性はともに50.88%であった。

テルミサルタン群で28%の認知症リスク減少

 認知症と診断されるまでの期間の平均はテルミサルタン群で4.91年、対照群で4.81年と同等で(標準化絶対差0.032)、それぞれ50例(2.19%)、292例(3.20%)が診断された。

 Cox比例ハザードモデルを用いて認知症の発症リスクを検討したところ、対照群に対しテルミサルタン群では28%の有意な減少〔ハザード比(HR)0.72、95%CI 0.53〜0.97、P=0.03〕が示された。ADの診断(同0.59、0.18〜2.00)や全死亡(同0.99、0.54〜1.81)には両群で有意差は示されなかったものの、虚血性脳卒中ではテルミサルタン群で21%の有意なリスク減少が認められた(同0.79、0.67〜0.94、P=0.008)。

 今回の結果から、Liu氏らは「東アジアの一般人口において、高血圧を合併する糖尿病患者ではテルミサルタン投与により認知症発症リスクが減少することが示唆された」と結論。テルミサルタンは「PPAR-γ活性化作用を有する唯一のARBであり、PPAR-γ活性に伴う糖代謝の調節によりインスリン抵抗性が改善され、神経保護作用がもたらされるのではないか」と考察し、「臨床試験および基礎研究でさらなる検証を行う必要がある」との見解を示している。

松浦庸夫