一般人口における適度なアルコール摂取は心保護効果が示されている一方、心血管疾患(CVD)を有する集団ではどうか―。英・University College LondonのChengyi Ding氏らは大規模データをメタ解析し、結果をBMC Med2021; 19: 167)に報告した。

3つのデータベースから平均飲酒量別に検討

 健康な一般人口において、少量〜適量(light-to-moderate)のアルコール摂取は心血管イベントなどの健康リスクの減少との関連が報告されている(Int J Epidemiol 2013; 42: 1772-1790)。しかし、CVD既往のある集団においては明確なデータがないとして、Ding氏らはメタ解析を実施した。

 対象は①1994〜2008年のHealth Survey for England(HSE)②1995、98年および2003年のScottish Health Survey(SHeSs)③UK Biobank。このうち、①と②は16歳以上で心筋梗塞(MI)と狭心症の合併または脳卒中と診断された患者、③は心筋梗塞、狭心症、脳卒中のいずれかと診断された患者に限定した。飲酒状況、平均アルコール摂取量の他、年齢、性、喫煙状況などのデータがそろっていることを組み入れ条件とした。

 アルコール摂取量についてはエタノール換算で8gを1単位とし、1週間当たりの平均摂取量別に少量飲酒群(14単位以下)、適量飲酒群(男性:14単位超〜50単位以下、女性:14単位超〜35単位以下)、多量飲酒群(同50単位超、35単位超)に分け、①と②の合計、③単独でそれぞれ全死亡、心血管死、主要心血管イベント発生(③のみ)について比較した。

全死亡は7gを底値とするJ字型のリスク関係に

 まず、de novo cohort解析に必要なデータを抽出したところ、①+②は2,802例〔追跡期間は中央値9.5年(四分位範囲5.7〜13.0年)、平均年齢67.3歳〕、③は1万4,386例〔同8.7年(8.0〜9.5年)、61.6歳〕であった。各アウトカムについて見たところ、①+②では全死亡が1,257例、CVD死が492例、③では順に1,640例、631例、主要心血管イベント発生は2,950例確認された。

 非飲酒群と比較した飲酒量別の各アウトカムとの関連について解析した結果、①+②では各飲酒群のサンプル数が少ないせいか、いずれの飲酒群においても各アウトカムとの有意な関連は認められなかった。しかし、③では少量飲酒群と適量飲酒群で全死亡およびCVD死の有意なリスクの減少が示されたものの、多量飲酒群では有意な関連は認められなかった。

 さらに、①〜③のデータと条件が合致する12件の臨床試験データを加えた計4万8,423例を対象に、飲酒と各アウトカムの用量反応関係についてメタ解析を実施した。その結果、1日当たりの飲酒量が、全死亡で7g〔相対リスク(RR)0.79(95%CI 0.73〜0.85)〕、CVD死で8g(同0.73、0.64〜0.83)、主要心血管イベント発生で6g(同0.50、0.26〜0.96)を底値とするJ字型の関係が示され、順に62g、50g、15gまで有意なリスク減少が維持された。なお、多量飲酒群においては有意なリスクの上昇は認められなかった。

 以上から、Ding氏らは「CVD患者において1週間当たり約105g(13単位相当。1単位はビール半パイント)までの飲酒量であれば、全死亡およびCVD死のリスク減少と関連することが示唆された」と結論。今回の結果が近年の同様のメタ解析結果を支持するものであるとした上で、「CVDの再発予防として禁酒する必要はないだろう。ただし、がんなど他の健康アウトカムへの悪影響を考慮すると、非飲酒者があえて飲む必要はない」と付言している。

松浦庸夫