新型コロナウイルス感染者の急増を受け、政府は3日、入院を重症患者や重症化リスクの高い患者に限る方針を日本医師会などに伝えた。過去にない感染爆発に直面し、病床を確保するため方針転換を強いられた。ただ、自宅療養者の容体が急変する事例も相次いでおり、感染者の病状をきめ細かく管理できるかが課題となる。
 「急激な感染拡大でも医療提供体制を確保し、症状に応じて必要な医療ができるよう方針を転換した」。菅義偉首相は3日、日医の中川俊男会長らと首相官邸で会い、軽症者だけでなく重症化リスクが低い中等症患者も基本的に自宅療養とする政府方針を説明。入院できない患者のケアに各地の診療所の協力を呼び掛けた。
 政府が入院絞り込みに踏み切ったのは、新型コロナ「第5波」が前例のない広がりを見せているためだ。2日時点の内閣官房資料によると、東京都の陽性率は19.8%。その他の地域でも10%超の指標が目立ち、感染症専門家が「異常な数値。市中感染がまん延している状態」と指摘するほど。全国の重症者数も7月下旬以降は増加傾向にある。西村康稔経済再生担当相は3日の記者会見で、「この状況が続けば適切な医療が受けられず、救える命も救えない状況になりかねない」と危機感をあらわにした。
 現在、感染者の多数を占める30代以下では、無症状や軽症がほとんどとされる。ただ、自宅療養中に呼吸困難を伴う中等症へと悪化するケースもある。新型コロナに感染した経験を持つ医療関係者は、「分類上は中等症とされたが、実際は息をするのもやっとだった。あれで自宅療養だったらどうなっていたか」と振り返る。
 爆発的な第5波に自宅療養で対応するには、症状の丁寧な観察が欠かせない。政府は往診やオンライン診療などを通じ、自宅療養者の状況把握に努める考え。診療報酬も拡充し、医師への幅広い協力を求める。ただ「開業医でも新型コロナ診療に抵抗感を示す向きもある」(政府関係者)。各地の保健所も新規感染者の急増で負担が増しつつあり、患者の容体の変化に対応できなければ、結果的に医療崩壊の状態に陥りかねない。
 ここにきて政府が自宅療養を前面に打ち出す必要に迫られたのは、新型コロナ患者向けの病床の上積みが進んでいないことの裏返しでもある。与党からも政府方針に戸惑いが出ている。公明党の山口那津男代表は3日、首相と昼食を共にした際、「もう少し対応できる病床を増やすとか、マンパワーを増やすとか、中等症に丁寧な対応をお願いしたい」と注文を付けた。 (C)時事通信社