インターネット上には健康・疾患に関する誤った情報があふれており、特にTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアで顕著とされる。米・University of Utah School of MedicineのSkyler B. Johnson氏らは、ソーシャルメディア上に投稿されたがんに関する記事を分析。約3分の1に誤った内容が掲載されており、そのうちの8割弱には有害な情報が含まれることをJ Natl Cancer Inst2021年7月22日オンライン版)に報告した。

がん種別に2人の専門医が正確性と有害性を評価

 ソーシャルメディアでは、虚偽の内容を含む情報が迅速かつ広範囲に拡散することが懸念される。健康・疾患に関連する誤った情報の発信は、エビデンスに基づく医療の提供を妨げ、患者と医師の関係に悪影響を及ぼし、患者の死亡リスクを高める可能性がある。ソーシャルメディア上に投稿された虚偽情報への対応は、公衆衛生上の重要な課題に位置付けられる。

 特にがん治療においては、エビデンスに基づかない治療は生存率の悪化に直結する可能性が極めて高い。Johnson氏らは、ソーシャル分析ツール(BuzzSumo)を用いて4つのソーシャルメディア(Twitter、Facebook、Pinterest、Reddit)に引用として投稿された4がん種(乳がん、前立腺がん、大腸がん、肺がん)の治療に関する記事を対象に、内容の正確性と有害性を検証した。

 各種がんに関し、2018年1月〜19年12月に前記の4サイトに投稿され閲覧数が多かった50記事を抽出、計200記事を検証の対象とした。記事の内訳はオンラインメディアが41.5%、新聞・出版社または放送局のウェブサイトが37.5%、医学雑誌が17%、クラウドファンディングサイトが3%、個人ブログが1%だった。

 がん種別に全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)の委員2人がレビューを行い、記事の正確性、誤りとした際の理由、有害性とその理由を評価した。評価者2人の一致率はCohen's κ係数により評価した。また、記事を引用した投稿へのエンゲージメント(投稿に対する反応。「いいね」やリツート、返信など)と誤った情報および有害性との関連も検討した。

誤った内容を含む記事の8割弱は有害情報

 検討の結果、200記事中65記事(32.5%)に誤った内容が含まれていた〔κ=0.63(95%CI 0.50〜0.77)、〕。誤りとした理由については「誤解を招く内容(結論が統計学的データで裏付けされていないなど)」が28.8%で最も多く、エビデンスの強弱の誤りが27.7%、有効性が確立していない治療法(臨床試験未実施、エビデンス不十分)が26.7%と続いた。

表. 引用記事の正確性および有害性

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J Natl Cancer Inst 2021年7月22日オンライン版)

 また、200記事中61記事(30.5%)に有害な情報が含まれていた。有害とした理由については「治療の遅延につながる懸念」が31.0%で最も多く、「治療に関する費用負担増大の懸念」が27.7%、「有害事象の懸念」が17.0%、「有害な相互作用の懸念」が16.2%と続いた。誤った内容を含む65投稿の76.9%に有害な情報が含まれていた。

 記事へのエンゲージメントの大半(96.7%)はFacebookに対するものだった。全てのソーシャルメディアに対するエンゲージメントは、正確な記事よりも誤った内容を含む記事、有害な情報を含む記事の方が有意に多く、Facebookのみの検討でも同様の傾向にあった()。TwitterとRedditでも同様の傾向が認められたが、Pinterestでは認められなかった。

 Johnson氏は「ソーシャルメディア上のがんに関する記事のおよそ3分の1は正確性を欠き、有害な情報が含まれることが示された。こうした主治医の見解とは異なる情報に触れることは、患者に混乱を来す懸念がある。また、エンゲージメントは正確な記事よりもむしろ誤った記事で高いことも明らかとなり、影響を受けやすい利用者が少なくないソーシャルメディア上で、有害な誤情報が永続的に提供される事態が危惧される」と結論している。

 なお、同氏らは正確性を欠く記事の一例として「転移性乳がんへの化学療法には効果がない」「前立腺がんは重曹で治療できる」、有害な記事の一例として「肺がんは大麻由来成分のカンナビジオールオイルで治療できる」「がん標準治療を中止しアルカリ食を実践することでがんを治療できる」などを挙げている。

(安部重範)