障害物の存在を事前に警告するウェアラブルデバイスを用いることで重度視覚障害者の衝突リスクが37%減少することが、米・Schepens Eye Research Institute of Mass Eye and Ear/Harvard Medical SchoolのShrinivas Pundlik氏、Gang Luo氏らが行った二重盲検ランダム化比較試験(RCT)の結果から明らかになった。詳細はJAMA Ophthalmol2021年7月22日オンライン版)に報告された。

リストバンドの振動で警告

 視覚障害者は衝突や転倒リスクが著しく高く、移動補助ツールとして一般的に用いられている白杖や盲導犬などには利点がある半面、それぞれに効果とコストの問題が存在する。視覚障害者にとって白杖は最も効果的で手ごろな移動補助ツールの1つだが、限界がある。白杖は主に手の届く範囲の地面にある危物を検知するが、空中の危険物は見落とされることがよくある。市街地など歩行者が多い混雑した環境では、近くの歩行者にぶつからないように、白杖を振る範囲を制限する必要がある。また、盲導犬は非常に効果的だが、高額な盲導犬の訓練費用(通常4万5,000~6万ドル)を負担できる人は限られている。一方、周囲の障害物の存在を事前に警告する電気デバイスもあるが、実際の日常的な移動環境での効果についてはエビデンスがほとんどない。

 Luo氏とPundlik氏らは今回、ウェアラブルコンピュータビジョンデバイスを開発。この装置は、斜め掛けバックパックに入ったデータ記録装置と画像処理装置、胸部のストラップ部分に取り付けられた広角ビデオカメラ、近距離無線通信Bluetoothと接続された2つのリストバンドで構成されている(写真1、2)。

写真1. 斜め掛けバックパックの胸部ストラップ部分に取り付けられたカメラを調整するLuo氏

271014写真.jpg

写真2. 画像処理装置

271015写真.jpg

(写真1、2ともMass Eye and Ear提供)

 ビデオカメラは、カメラの視野に入り込んだ物体と周囲にある物体の画像を取り込み、相対的な運動を基に衝突リスクを解析する画像処理装置に接続されている。左右どちらかに衝突の危険が迫ると同側のリストバンドが振動し、正面衝突の危険を検知すると両側のリストバンドが振動して危険を知らせる。

 他のデバイスは、障害物の移動方向にかかわらず近くに物体があるだけで警告するが、このデバイスは相対的な運動を分析して使用者が衝突リスクのある障害物に近づいている場合のみ警告し、障害物が使用者の進路にない場合は警告しないようプログラムされている。

日常的な移動での効果を検討

 Pundlik氏、Luo氏らは、白杖または盲導犬を使って一人で移動できる完全失明または周辺視野制限がある重度視覚障害者に、ウェアラブルデバイスの使用訓練を施行後、4週間装着してもらい、自宅および日常的な移動における衝突予防効果を二重盲検RCTで検証した。

 なおウェアラブルデバイスは、①リストバンドの振動による衝突警告が発信されるアクティブモード(介入モード)②衝突の危険を検知しても警告を発しないサイレントモード(対照モード)―にランダムに入れ替わるよう設定されている。衝突警告発信時に記録された情報とビデオを2人の評価者が評価し、同一被験者のアクティブモードとサイレントモードにおける障害物への衝突回数(100警告・時間当たり)を比較した。

 49例が登録され、36例が訓練と自宅での使用期間を完遂し、31例〔58%、男性18例、年齢中央値61歳(範囲25~73歳)〕が解析に組み込まれた。視力が光覚弁以下の者は19例(61%)、白杖を移動補助に使用している者は28例(90%)だった。

 衝突回数は、サイレントモードに比べてアクティブモードで有意に減少した〔中央値13.8回(四分位範囲6.9~24.3回)〕vs . 9.3 回(同6.6~14.9回)、差4.5回、95%CI1.5~10.7回、P<0.001〕。人口統計学的特性、光覚弁以上の視力、転倒歴などを調整後も、衝突回数はサイレントモードに比べてアクティブモードで37%有意に減少した(率比0.63、 95%CI 0.54~0.73、 P<0.001)。

 以上から、Luo氏らは「衝突警告ウェアラブルデバイスの装着は、視覚障害者の日常的な移動における障害物への衝突率の低下と関連していた。同デバイスによる移動補助ツールの増強効果が示唆された」と結論した。研究チームは今後、モバイル処理力とカメラを改善して、デバイスをより小さくより見栄えのするものにすることを目指すという。

大江 円