膵がんは自覚症状に乏しく、早期診断が困難ながん種の1つであることから、予防の重要性が指摘されている。イラン・Tehran University of Medical SciencesのNeda Ghamazad Shishavan氏らは、膵がんの危険因子のうち個人で修正可能な食事摂取に着目。特に脂肪酸摂取と膵がん発症リスクとの関連について検討し、結果をNutr J2021; 20: 69)に報告した。

中高年4万6,000例超を解析

 膵がんは、世界的に男女ともにがんによる死亡の第7位を占め、2012年の推計では年間死亡者数は約33万例とされている(World J Gestroenterol 2016; 22: 9694-9705)。なお、日本では2017年の新規診断者数はおよそ4万例(男性2万1,000例、女性1万9,000例)で、2019年の膵がん死亡は約3万6,000例であった。

 こうした中、Ghamazad Shishavan氏らは膵がんの危険因子のうち個人で修正可能な食事摂取に着目、特に脂肪酸摂取と膵がん発症リスクとの関連について検討した。対象は、イラン北部のカスピ海沿岸東部地域で食道がんの危険因子を検討したGolestanコホート研究の参加者5万45例(2004〜08年に40〜75歳)。このうち、国際疾病分類第10版(ICD-10)により膵がんの発症と判定した76例(膵がん群)と、急性腎障害やその他のがんの発症例、BMIやエネルギー摂取が通常範囲外例などを除いた4万6,904例(対照群)を抽出した。脂肪酸摂取については、116品目の食物摂取頻度調査票(FFQ)を用い、摂取量別で四分位に分類した。

 対象の平均年齢は膵がん群58.11歳〔標準偏差(SD)±9.49歳〕、対照群51.83歳(SD±8.80歳)で、対照群に比べ膵がん群は喫煙者の割合が有意に多く、身体活動量が有意に少なかった(順にP=0.002、P=0.02)。

オリーブ油などの一価不飽和脂肪酸摂取で逆相関

 エネルギーおよび総脂肪摂取量、BMI、年齢、性、婚姻状況、喫煙状況、身体活動量、がんの家族歴などを補正し、脂肪酸摂取量が最少の第1四分位群に対する第2〜4四分位群の膵がん発症リスクを算出した。脂肪酸の種類別に膵がん発症リスクを求めた結果、飽和脂肪酸(SFA)摂取ではハザード比(HR)は1.05(95%CI 1.01〜1.09)と摂取量が増えるに伴い膵がん発症リスクの有意な上昇が認められた(傾向性のP=0.01)。

 一方、一価不飽和脂肪酸(MUFA)摂取ではHR 0.92(95%CI 0.86〜0.99、傾向性のP=0.036)と逆相関が示され、膵がん発症リスクの予防効果が示唆された。多価不飽和脂肪酸(PUFA)摂取では予防効果は示されなかったものの、摂取量が増えるに従い膵がん発症リスクは減少する傾向が確認された(HR 0.91、95%CI 0.84〜1.00、傾向性のP=0.05)。

 今回の結果から、Ghamazad Shishavan氏らは「総脂肪酸摂取量と膵がん発症リスクとの関連は認められなかったが、脂肪酸の種類別に見るとSFAでは摂取量が増加するごとに膵がんリスクが顕著に上昇する正の相関が認められ、MUFAでは逆相関が確認された」と結論。「バターやココナッツオイルなどのSFAを、オリーブ油やキャノーラ油などのより健康的な食品に置き換えることで、膵がんリスクの低減が期待できる」と付言している。

松浦庸夫

修正履歴(2021年8月6日):本文の一部を修正しました