政府の新型コロナウイルス対応に与党がいら立ちを強めている。感染者の入院制限など重要な方針転換があっても、与党や専門家に相談しないまま打ち出す独走ぶりが目立つためだ。衆院議員の任期満了2カ月半前とあって、衆院選への影響に敏感になっている。
 政府・与党は5日、コロナ対策に関する連絡会議の実務者会合を開催。重要な政策転換の際には政府・与党で事前協議を行うことを確認した。今回の入院制限をめぐっては、与党内に「根回し不足だ。話にならない」(中堅議員)との不満が渦巻いており、政府に厳しくクギを刺した形だ。
 入院制限に関しては、実務者会合で注文が続出。政府は席上、対象地域は限定的であくまで選択肢の一つにすぎないと明確にした自治体向けの説明文を提示した。だが、与党側は「国民の納得が得られる精緻な案になっていない」として、修正を求めた。
 全国的な感染急増を受けたまん延防止等重点措置の拡大についても、疑問視する声が上がった。自民党の自見英子氏は5日の参院厚生労働委員会の閉会中審査で「感染状況は日に日に深刻になっている。この瞬間にでも全国一律の宣言を出すべきだ」と訴えた。
 与党が政府方針に次々と異論を唱えるのは異例の事態だ。内閣支持率が政権継続の危険水域とされる水準付近にまで落ち込む中、政府が独走することへの焦りは強い。自民党の下村博文政調会長は4日のBSフジ番組で「国民に安心してもらえなければ何のための政府か」と激しく叱責した。
 もっとも、政府の「調整不足」は今に始まったことではない。飲食店の酒類提供停止をめぐっては、西村康稔経済再生担当相が唐突に金融機関や業者への働き掛けの方針を表明して与党を驚かせ、撤回に追い込まれた。
 菅義偉首相は「何でも自分でやってしまう」(政府関係者)とささやかれている。政府・与党のパイプ役である坂井学、岡田直樹両官房副長官が十分に務めを果たせていないとも指摘され、首相官邸の「機能不全」も影を落としている。閣僚経験者は「全体的に歯車が狂っている。誰かが立て直さないと大変なことになる」と危機感を示した。 (C)時事通信社