重症化リスクの低い新型コロナウイルス感染者を原則自宅療養とする政府の新方針が迷走している。2日の発表後、「中等症の入院制限につながる」として、与野党や自治体、医療関係者など各方面が大きく反発したため、入院対象の範囲を日に日に拡大。菅義偉首相は5日、「引き続き丁寧に説明していく」と方針の堅持を表明したが、事実上、骨抜きになる可能性も出てきた。
 厚生労働省ではコロナ患者を、せきや発熱がある軽症、肺炎が起きる中等症、人工呼吸器が必要な重症に分類。中等症はさらに、酸素吸入の必要がない「I」と、吸入が必要な「II」に分けてきた。
 「入院対象は、重症者と重症化リスクの高い患者。症状で判断するのでケース・バイ・ケースだ」。当初、厚労省幹部はこう繰り返し、入院基準に中等症が入るかどうかの明示を避けた。しかし、このあいまいさが混乱に拍車を掛けた。
 首相は3日、「酸素投与が必要な方や、糖尿病などの疾患を持つ方は確実に入院していただく」と発言。中等症IIに加え、Iでもリスクの高い人は入院対象になると明かした。
 それでも、全国知事会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)は、「客観的基準を示してほしい」と要望。医療関係団体の幹部も「現場はひっくり返っている」と困惑する現状を打ち明けた。
 さらに、身内の与党内からも「中等症の自宅療養はあり得ない」との声が噴出し、政府に方針撤回を迫る異例の展開となった。
 これを受け、田村憲久厚労相は5日、「中等症は基本的に入院。軽症でも悪化の可能性が高いと医師が判断すれば入院だ」と説明。「重症化リスクの高い患者」の解釈が、中等症どころか、一部の軽症者まで含まれ、なし崩し的に膨らんだ。
 もっとも、インド由来のデルタ株が猛威を振るい、各地では病床使用率が上昇。特に東京都の自宅療養者は1万5000人近くに上り、入院者の「選別」は避けて通れない道だ。厚労省幹部は「きちんと説明すれば理解してもらえたと思うが、根回し不足だった」と肩を落とした。 (C)時事通信社