マウスおよびラットは夜行性動物であるにもかかわらず、これらのモデル動物を用いた実験は日中に行われることが多い。米・West Virginia UniversityのRandy J. Nelson氏らは、動物の概日リズムを考慮しない実験は再現性に乏しく結果にばらつきが生じるとの研究成果をNeurosci Biobehav Rev2021; 127: 740-746)に報告した。

午前3時にたたき起こされ迷路を歩かされるような状況

 動物モデルの大部分を占めるマウスおよびラットは夜行性である。動物モデルの概日リズムを考慮せずに行う試験をヒトの状況で例えるなら、午前3時にたたき起こされて迷路を歩かされたり、買い物リストにある20個の品物を覚えさせられたりするようなものだろう。

 Nelson氏らは、齧歯類の動物モデルを用いた8つの領域(学習・記憶、感覚・知覚、注意、摂食、交配、母親の行動、攻撃性、薬物探索)の研究論文について、インパクトファクターが高い25誌で検討した。検討では、齧歯類を用いた実験の実施時間帯(日中または夜間、その両方)、実施時刻(おおよそまたは不明を含む)を特定した。

4割は実験を行った時間帯に言及せず

 夜間に実験を施行した研究は、全体のわずか20%だった。日中に実験を行ったのは17%で、7.5%が夜間と日中の両方に行っていた。42%は実験の時間帯に言及しておらず、曖昧な記載は13.5%に見られた。

 さらに、夜間に行われた実験では照明・外部光曝露からの防御対策を報告していなかった。

 Nelson氏らによると、外部光曝露への防御対策として、日中はモデル動物を暗室で飼育する、研究者が暗室に出入りする際にはドアの外から漏れる外部光を遮蔽するなどが行われるという。また、日中に齧歯類を用いた実験を行う場合は、暗い赤色照明を用いるとよいという。齧歯類には赤い光が見えないため、赤色照明下なら概日リズムを乱すことがないからだ。

 しかし、論文中の研究方法からモデル動物の概日リズム対策は把握できなかった。

概日リズムの把握は極めて重要

 モデル動物として齧歯類を用いる研究の場合、概日リズム対策に関する情報の記録は極めて重要である。

 他の研究者が、詳細な実験方法を把握せずに先行研究の追試を行った場合、再現性に乏しく結果の妥当性を確認することができない。さらに齧歯類の概日リズムに反して日中に行った実験であれば、その結果をヒト研究に適用できない可能性もある。

 Nelson氏は「サイエンスの厳密さと再現性を改善する上で、われわれにとって動物モデルの概日リズムの把握は極めて重要である」と述べている。

(田上玲子)