新型コロナウイルスのワクチン普及で先行する欧州やイスラエルで、3回目の接種を行う動きが広がっている。感染力の強いインド由来のデルタ株が世界的に流行する中、「ブースター」と呼ばれる追加接種で抗体が大きく増えるという期待が背景にある。ただ、ワクチン供給量は限られており、自国民保護と途上国を含めた世界規模のワクチン平等配分の両立をめぐるジレンマが深まっている。
 ◇接種7割も感染予防不十分
 「パンデミック(世界的大流行)との闘いを続けるため、この秋のブースター計画は極めて重要になる」。ジョンソン英首相は3日に公表した書簡で、追加接種の必要性を強調した。
 ワクチンの早期普及に成功した英国では、成人の7割以上が2回の接種を終えたが、デルタ株のまん延で新規感染者はなお1日約3万人に上る。このため政府は、高齢者や持病を抱える人などを対象に9月から追加接種を始める方針だ。
 イスラエルは、今月から追加接種に乗り出した。世界最速ペースでワクチン接種を進めた同国だが、6月下旬以降は2回の接種を完了した人の間でも感染が拡大。現地の研究によると、2回目の接種を終えた人では、約半年後でも重症化を防ぐ効果は持続する一方、感染予防効果が16%まで低下するとのデータがあるという。
 ドイツやフランスは9月から高齢者らを対象に追加接種を始める方向だ。米政府内でも、免疫の弱い人に対する追加接種の「早期実現」(ファウチ大統領首席医療顧問)を図るべきだという声が上がる。日本では河野太郎規制改革担当相が、追加接種開始は「恐らく来年になると思う」との見通しを示した。
 ◇WHO「受け入れ難い」
 米製薬大手ファイザーは7月、2回目の半年後に追加接種を行った場合、5~10倍の抗体が得られると発表。「デルタ株を含む変異ウイルスに対し最高水準の予防効果を維持できる」と追加接種を促した。
 だが、先進国がこぞって追加接種に乗り出せば、ワクチン確保に苦慮する途上国にしわ寄せが行くという指摘もある。国連開発計画(UNDP)によると、今月4日時点で高所得国全体では人口の50%超がワクチン接種を受けたのに対し、低所得国は1%強にとどまっている。
 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は「最も脆弱(ぜいじゃく)な人々が取り残されているのに、既に世界のワクチン供給量のほとんどを使用した国々がさらに使うのは受け入れ難い」と批判し、少なくとも9月末まで追加接種を見合わせるよう求めた。
 これに対し米政府は、十分なワクチンを途上国に提供しているとして「(追加接種の自制は)間違った選択だ」(サキ大統領報道官)と反論。欧州やイスラエルも追加接種計画を変更するそぶりも見せていない。 (C)時事通信社