近年、日本女性の約10人に1人が乳がんに罹患し、特に女性が家庭や社会で活躍する30歳代後半から急激に増加するといわれている。畿央大学健康科学部人間環境デザイン学科教授の村田浩子氏らの研究グループは、乳がん術後女性用に手術痕を気にすることなく入浴できる使い捨てタイプの入浴着を開発したと発表した。

入浴着の認知度は低い

 村田氏は「乳がんは早期発見であれば約90%が治癒する。そこで、治癒後の健康改善、QOL向上の支援を目的に、日常の楽しみの1つである入浴に着目し、温泉施設などで着用できる入浴着を作製することにした」と説明している。

 同氏らは、奈良県内の乳がん術後女性および入浴施設へのアンケートなどを実施。2016年に行った乳がん術後女性が対象の予備調査では、約半数が「温泉に行きたくても行かれない経験をした」と答え、市販されている入浴着については半数が「知らないと」回答していた。同県内の入浴施設においても、入浴着の存在はほとんど知られていなかった。

 昨年(2020年)に実施したアンケートでも、入浴着を「知らない」「あまり知らない」との回答が、乳がん術後女性で57%、入浴施設では88%に上っており、認知度は低かった。この調査から、奈良県における入浴着の認知度は低く、入浴施設での運用も徹底されていない実態が明らかになり、入浴着の着用について行政などからの周知が求められた。さらに、求められる入浴着のタイプや必要な機能、素材などの課題が明確になった。

目立たず着脱もしやすい

 村田氏らは、調査結果を基に日本初となる使い捨て入浴着を作製。肌に近い色の生地を使用することにより着用していることが目立たず、胸上部の切り替え部分にギャザーを入れて左右の乳房のバランスをカバーできるデザインとなっている(写真)。生地の外側に撥水性、内側に吸水性を有する素材を使用し、湯につかっても浮き上がらず湯船から出たときにも湯切れを良くしたという。

写真. 乳がん術後女性用使い捨て入浴着

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(畿央大学リリース)

 また、生地の内装層部に伸縮性のあるポリウレタンを使用し、背中をV字型に大きく開けるデザインにすることで身体を洗いやすくし、結果として、着用時の動作や着脱のしやすさにもつながった。

 奈良県では今年3月、入浴着を着用した入浴に理解を求めるポスターを作成して県内全ての入浴施設に配布し、県民への周知と理解を求めた。同氏らは「今後は、入浴施設での運用を試みるとともに、持ち込みタイプの"マイ入浴着"についても素材開発を進めていく」と展望している。

(慶野 永)