限局性食道がんの治療では術前化学放射線療法および外科的切除が理想的だが、標準的な同時化学放射線療法(CCRT)には毒性の懸念がある。特に高齢者では治療完遂が困難で、放射線療法(RT)単独となることもあり、根治手術の施行に支障を来すことも少なくない。中国・University of Chinese Academy of ScienceのYongling Ji氏らは、高齢食道がん患者を対象にRTへのテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1)の上乗せ効果を検討する非盲検第Ⅲ相ランダム化比較試験を実施。2年全生存(OS)を有意に改善し、忍容性にも問題ないことをJAMA Oncol2021年8月5日オンライン版)に報告した。

対象は70〜85歳、ⅠB〜ⅣB期の食道がん患者

 2020年の世界がん統計(GLOBOCAN)によると、食道がんによる死亡は全がん種で6番目に多く(CA Cancer J Clin 2021; 71: 209-249)、診断時年齢の中央値は68歳で(National Cancer Institute. SEER cancer stat facts: esophageal cancer)、患者の4割以上が70歳以上とされている(Cancer Med 2017; 6: 2886-2896)。平均寿命の延伸と高齢化の進展に伴い、高齢食道がん患者に対する至適治療の重要度は増している。

 手術不能な局所進行食道がんに対してはフルオロウラシル(5-FU)+シスプラチン(CDDP)併用によるCCRTが広く行われるが、毒性により高齢者では治療完遂が困難で、かつRT単独と比べて治療効果が優れているかについては明確ではない。

 S-1は経口の5-FU誘導体であり、Ji氏らはこれまでに高齢食道がん患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験において、S-1+RTの毒性は軽度で、2年OSは45.1%と主要評価項目を達成したことを報告している(J Thorac Dis 2016; 8: 451-458Oncotarget 2017; 8: 83022-83029)。

 今回報告された試験の対象はⅠB〜ⅣB期の高齢食道がん患者。ⅣB期の症例は鎖骨上/腹腔リンパ節転移のみを組み入れ、遠隔転移例は除外された。年齢は70〜85歳、全身状態(PS)は0〜1が適格とされた。

 2016年6月31日〜18年8月31日に中国の23施設から298例が登録され、RT(30分割で60Gy、2.0Gy/日×週5日)のみを実施するRT群(149例)、RT(30分割で54Gy、1.8Gy/日×週5日)にS-1(70mg/m2/日、1〜14日目および29〜42日目に経口投与)を上乗せするCCRT群(149例)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は2年OSで、副次評価項目は奏効率、無増悪生存(PFS)、毒性プロファイルとされた。

 両群の背景は同様で、RT群とCCRT群でそれぞれ、年齢中央値は77歳〔四分位範囲(IQR)74〜79歳〕、77歳(同74〜80歳)で、男性は91例(61.1例)、89例(59.7%)、Ⅲ期以上は71例(47.7%)、80例(53.7%)、扁平上皮がんは148例(99.3%)、148例(99.3%)、腫瘍長5cm以上は88例(59.1%)、90例(60.4%)だった。

 RT群の134例(89.9%)、CCRT群の115例(77.2%)が治療を完遂し、2020年8月の解析時点の観察期間中央値は33.9カ月(IQR 28.5〜38.2カ月)だった。

OS中央値はRT群15.4カ月、CCRT群24.9カ月

 2年OSはRT群の35.8%に対し、CCRT群では53.2%と有意な改善が示された〔ハザード比(HR)0.63、95%CI 0.47〜0.85、P=0.002、図-左〕。OS中央値はそれぞれ15.4カ月(95%CI 12.4〜18.3カ月)、24.9カ月(同16.7〜33.2カ月)だった。CCRT群におけるOSの改善は年齢、性、PS、BMI、チャールソン併存疾患指数、腫瘍長、臨床病期などのサブグループ解析でも一貫して認められた。多変量解析では、CCRT施行、年齢80歳未満、臨床病期Ⅱ以下がOSの改善に関連する因子として抽出された。

図. OSおよびPFS

28903_fig01.jpg

JAMA Oncol 2021年8月5日オンライン版

 PFS中央値はRT群の9.5カ月(95%CI 6.9〜12.1カ月)に対し、CCRT群では18.7カ月(同12.1〜25.3カ月)と有意な延長が示された〔HR 0.66、95%CI 0.50〜0.87、P=0.003、図-右〕。完全奏効率は、RT群の26.8%に対してCCRT群では41.6%と有意に高かった(P=0.007)。

S-1上乗せによるグレード3以上の有害事象は白血球減少症のみ

 グレード3以上の白血球減少症の発現は、RT群の2.7%に対してCCRT群では9.5%と有意に高かったが(P=0.01)、その他の有害事象の発現率に有意差は認められなかった。治療関連死はそれぞれ4例、3例に認められ、内訳はRT群はRT完了1〜4カ月後の放射線関連肺炎が2例、RT完了6カ月後の肺炎、RT実施中の細菌性肺炎が各1例で、CCRT群の3例はいずれもRT完了1〜4カ月後の放射線関連肺炎だった。死亡の7例中6例は75歳以上で、うち3例は80歳以上だった。

 以上から、Ji氏は「今回の対象はほとんどが扁平上皮がんであり、別途腺がんに対する別途検討が求められるものの、高齢食道がん患者に対するS-1を用いたCCRTは治療完遂率が良好で予後の改善が期待でき、忍容性にも問題ないことが示された。こうした集団に対する同レジメンの有用性が示唆された」と結論している。

(安部重範)