新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、今月末を期限とする緊急事態宣言の解除が見通せなくなってきた。「出口戦略」を描こうとした政府の思惑は崩れつつあり、関係自治体からは、大規模商業施設への休業要請など人出の抑制につながる強力な対策を求める声が相次いだ。デルタ株の猛威に感染がピークアウトする兆しは見えず、政府内には手詰まり感が漂う。
 西村康稔経済再生担当相は10日の記者会見で「これまで経験したことのない桁違いの感染が継続している」と危機感を表明。40~50歳代や若年層の重症者が増加しているのを念頭に「救える命を救えない状況になりかねない」と強調した。
 宣言発令中の6都府県は感染が急拡大している。1日当たりの東京都の新規感染者が8月半ばには1万人を超えるとの予測も都モニタリング会議で示され、政府関係者は「宣言解除は無理かもしれない」との見方を示した。内閣官房資料によると、全国の重症者は1230人(9日時点)で、7月中旬の約3倍に跳ね上がった。
 菅義偉首相はかねて「国民の4割がワクチン接種を1回終えると感染者が減少する」との見方を周囲に示してきた。ただ、4割超となった現在でも感染拡大が収まる気配は見られない。国民の多くが抗体を持ち流行が収束する「集団免疫」の達成も「当面は困難」との見方が政府内では強まっている。
 政府はワクチン接種の進展に合わせ、宣言発令・解除の判断に当たり、重症者数や病床使用率といった新規感染者数以外の指標に軸足を移したい意向だった。感染症法上の位置付けも、季節性インフルエンザなどと同じ5類に変更すべきだとの意見が出ていたが、想定を超える変異株の猛威を踏まえ、感染症専門家は「まずは現在の第5波と真剣に向かい合うべきだ」と楽観的な見通しを戒める。
 一方、宣言対象都府県の知事からは、飲食店への要請を中心とする感染対策の限界を指摘する声が上がる。大阪府の吉村洋文知事は9日、西村氏とのテレビ会議で「今まで通りのやり方でいいのか」と疑問を呈し、神奈川県の黒岩祐治知事は旅客機や電車の乗客数制限を提案。千葉県の熊谷俊人知事は会議後、記者団に首都圏全体で大規模施設の休業要請を検討すべきだとの考えを示した。
 西村氏は10日の会見で感染対策強化に関し、「(自治体間の)考えに差がある。国としてよく調整し、対応していきたい」と述べるにとどめた。 (C)時事通信社