関節リウマチ(RA)をはじめとする自己免疫疾患に用いられるメトトレキサート(MTX)などの免疫抑制薬は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの免疫原性や有効性への悪影響が懸念されている。オランダ・Amsterdam Rheumatology and Immunology CenterのLaura Boekel氏らは、同国のコロナワクチン接種者を対象に、免疫抑制薬の使用とワクチン1、2回接種後における抗体陽転率およびIgG抗体価との関係を検討。免疫抑制薬使用例では1回接種後の抗体陽転率が低かったものの、抗CD20抗体使用例を除き2回接種後には改善したと、Lancet Rheumatol2021年8月6日オンライン版)に報告した。(関連記事:「コロナワクチン、MTXで効果減弱か」「抗TNFα製剤でコロナワクチンの効果減弱」)

リウマチ性疾患、多発性硬化症患者が対象

 Boekel氏は同国で実施されている2件の前向きコホート研究から、リウマチ性疾患患者、多発性硬化症患者、健康対照のデータを抽出。2021年4月1日〜6月26日にコロナワクチンを1回以上接種した者を対象に、抗体陽転率およびSARS-CoV-2スパイク蛋白質の受容体結合ドメイン(RBD)に対するIgG抗体価を測定。免疫抑制薬の影響を検討した。

 期間内に条件を満たしたのは、自己免疫疾患群632例(リウマチ性疾患574例、多発性硬化症58例)、健康対照群289例だった。全体の平均年齢は63歳で、女性が67%だった。

 自己免疫疾患群における免疫抑制薬の内訳は、MTX 35%、TNF阻害薬(アダリムマブ、エタネルセプト、セルトリズマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブ)22%、抗CD20抗体(リツキシマブ、ocrelizumab)4%、非使用20%だった。接種したワクチンの種類は、アストラゼネカ製が自己免疫疾患群54%、健康対照群59%、ファイザー製がそれぞれ38%、37%、モデルナ製が8%、2%、ヤンセンファーマ製が0%、1%だった。

MTX、抗CD20抗体使用例で抗体陽転率が顕著に低下

 SARS-CoV-2非感染例におけるワクチン1回接種後の抗体陽転率は、健康対照群と比べ自己免疫疾患群で有意に低く〔73% vs. 49%、調整オッズ比(OR)0.33、P<0.0001〕、特にMTX使用例と抗CD20抗体使用例で顕著だった(順に30%、6%)。IgG抗体価も、健康対照群に比べ自己免疫疾患群で低かった(8.1AU/mL vs. 3.9AU/mL)。一方、ワクチン2回接種後の抗体陽転率は両群でほぼ同等(95% vs. 92%)であり、抗CD20抗体使用例の43%を除き、MTXなど他の免疫抑制薬使用例で軒並み80%を超えていた。IgG抗体価は健康対照群で高かった(86.7AU/mL vs. 48.6AU/mL)。

 それに対し、SARS-CoV-2感染例においては、ワクチン1回接種後の抗体陽転率は健康対照群で97%、自己免疫疾患群で96%であり、抗体陽転率、IgG抗体価のレベルともに両群で2回接種後の非感染例と同等だった。

 以上の結果を踏まえ、Boekel氏は「MTXと抗CD20抗体の使用例では、コロナワクチン1回接種後の抗体陽転率が抑制されるが、抗CD20抗体を除き、2回接種により改善することが示された」と指摘。「医師はMTX、抗CD20抗体の使用例ではワクチンの免疫原性が損なわれることを十分に認識しつつ、そうした患者に対する2回目のワクチン接種を遅らせるべきではない」としている。

 なお、日本リウマチ学会は「現時点でステロイドや免疫抑制薬がコロナワクチンに与える影響は分かっていない」としつつも、接種前後でそれらの薬剤は変更せず継続すべきとの見解を示している。

(平山茂樹)