がん検診の受診率を上げるには、受診率が低い集団への有効なアプローチが求められる。岡山大学病院精神科神経科の藤原雅樹氏らは、統合失調症患者を対象に並行群間ランダム化比較試験を実施。その結果、かかりつけ精神科で患者に対し個別にがん検診の受診を勧奨することで、大腸がんおよび肺がん検診の受診率が大幅に向上することが明らかになったと、Acta Psychiatr Scand2021年7月9日オンライン版)に発表した。

対象は39~80歳の統合失調症患者170人

 日本では、がん検診の受診率が低いことが問題になっている。中でも、精神疾患患者の受診率は一般人口に比べて低く、検診の恩恵を受けていないのが現状だ。しかし、統合失調症患者のがん検診受診率を上げる有効な手立てはない。

 そこで藤原氏らは、統合失調症患者のがん検診受診率向上に有効な勧奨法の探索を目的にランダム化比較試験を実施した。2019年6月3日~9月9日に精神科外来に通院中の統合失調症患者190人(年齢39~80歳、女性49.4%)を登録。市町村からのがん検診案内のみ行う案内群(85人)と案内に加え、通院先の外来スタッフが個別に大腸がん検診の説明や受診手続きの説明・支援を実施する個別勧奨群(85人)にランダムに割り付け、検診受診率を比較した。

胃がん、乳がん、子宮頸がんでは有意差なし

 その結果、大腸がん検診の受診率は、案内群で11.8%(95%CI 6.5~20.3%)にとどまったのに対し、個別勧奨群では47.1%(同36.8~57.6%)と有意に高かった(P<0.0001)。また、肺がん検診の受診率は、それぞれ16.5%(同10.1~25.8%)、35.3%(同26.0~45.9%)と、個別勧奨群で有意に高かった(P<0.0051)。

 一方、胃がん、乳がん、子宮頸がんでは、検診受診率に勧奨法による有意な変化はなかった。介入に関連する重篤な有害事象は認められなかった。

 以上から、藤原氏らは「かかりつけ精神科で個別にがん検診を勧奨することで、統合失調症患者の大腸がん、肺がん検診の受診率は向上する」と結論。「この勧奨法が普及すれば、精神疾患患者に生じているがん検診受診率の格差が解消され、がんの早期発見にもつながる」と期待している。

(比企野綾子)