520人が犠牲となった日航ジャンボ機墜落事故は12日、発生から36年を迎えた。現場となった群馬県上野村の「御巣鷹の尾根」では、遺族らが肉親の墓標を訪ねる慰霊登山を行い、鎮魂の祈りをささげた。尾根の麓で営まれた追悼慰霊式には日本航空の赤坂祐二社長が出席し、改めて安全運航を誓った。
 神奈川県大和市の若本千穂さん(56)は、事故で父昭司さん=当時(50)=を失った。2年前は長男夫婦、孫の詩葉ちゃん(3)と一緒に登ったが、今年は新型コロナウイルス対策を徹底した上で長男と2人で訪れた。コロナが落ち着けば再び詩葉ちゃんを連れて来て、「悲しいことがあったけど、『(ひい)じいじ』を守っている優しい場所だよ」と伝えるつもりだ。
 宝塚歌劇団出身の女優だった娘の由美子さん=当時(24)=を亡くした東京都大田区の吉田公子さん(87)は昨年、体調を崩して登山を断念。この日は休憩を挟みながら山道を一歩ずつ踏みしめ、「毎年これが最後と思いながら登っている。娘への思いは何年たっても変わらない」と話した。
 新型コロナの感染拡大を受け、群馬県では8日から、まん延防止等重点措置が20市町村で実施されている。上野村は対象区域外だがコロナ対策のため、11~13日の登山は遺族や関係者のみとし、時間も午前8時~午後5時に制限された。12日に登山した遺族は50家族の143人で、例年の半数程度にとどまった。
 尾根の麓にある「慰霊の園」では12日夕、追悼慰霊式が開かれた。感染対策のため遺族は2年連続で参列せず、同村の関係者が中心となって実施。墜落時刻の午後6時56分にろうそくをともして黙とうをささげる様子は、インターネットで中継された。
 日航の赤坂社長は式典終了後、取材に応じ、「航空の安全のための努力は永遠にやっていかなければいけない。後輩にも継承しながら事故の教訓を大事にしていきたい」と語った。 (C)時事通信社