脳梗塞を発症し重度の麻痺が生じた患者を対象に、患者の骨髄から取り出して作製した神経や筋肉などへの分化能を持つ自家骨髄間質幹細胞(BMSC)を脳内に移植して機能回復を目指す治療法に関する第Ⅰ相医師主導治験RAINBOWの結果を、北海道大学病院脳神経外科教授の藤村幹氏らの研究グループが同大のウェブサイトで報告した。個人差が大きいものの「自力で歩行できる例もあり、機能回復が推定される結果であった」としている。

重度麻痺を生じた7例に投与、1年間にわたり安全性などを確認

 藤村氏らはこれまで、BMSCが脳内で生育し増殖すること、脳梗塞部に直接投与することで障害部位に遊走し神経細胞に分化することや栄養因子を分泌を介して運動機能を回復することなどを報告している。そこで、培養し増殖させた自家BMSCを少数例の脳内に直接投与する治験を国内で初めて開始した。

 RAINBOWは2017年に開始し、2021年4月に終了している。対象は、脳梗塞発症後14日時点で重度の麻痺を来した患者7例。患者から採取した骨髄細胞を同院の細胞プロセッシング室で培養・加工して自家BMSC(HUNS001)を製造し、発症から約2カ月後に手術により脳梗塞周囲に投与した。その後、1年間の観察期間における安全性と有効性をリハビリ機能評価やMRI検査などで確認した。

 その結果、安全性に関しては重篤な合併症は認められなかった。また、対照群が存在しない単群試験であるため、有効性を厳密に検証することはできなかったものの、自力での歩行が回復するなど一定の有効性が推定された。さらに、HUNS001が脳内の損傷部位に移動することや脳梗塞周辺の神経細胞が活性化していることなどを画像検査で確認できたという。

 今回の結果について、藤村氏らは「この治療法が社会に広まることで、脳梗塞患者のQOL向上に大きく貢献できる可能性がある」としながらも、同試験は対象が少数であり、対照群を設定していないことから「今後、大規模な臨床試験の実証を予定している」としている。

脳神経組織の再生を期待

 国内では年間約30万人が新たに脳梗塞を発症し、多くの患者が死亡、または重度の後遺症が残る。手足の麻痺や歩行障害などの機能障害が生じることが多いが、神経機能を回復させる有効な治療法は現時点でない。また、脳梗塞は血管閉塞を生じてから脳神経組織が傷害されるまでの時間が極めて短く、リハビリの効果が限定的であるなど治療効果は決して満足できるものではない。

 その一方で、再生医療や細胞医療が急速に進歩しており、これまで困難だった後遺症を回復させる治療法として注目されている。同院の治療法は、いったん傷害された脳神経組織を再生しうる次世代の治療法として期待される。

(小沼紀子)