厚生労働省が13日発表した今年度の都道府県別最低賃金(時給)は、全国加重平均で前年度比28円増の930円となった。引き上げ額は過去最大で、島根など7県で国の審議会が示した目安を上回った。所得の拡大などが期待される一方、新型コロナウイルス禍で業績悪化に苦しむ企業には大きな負担となり、雇用への影響を懸念する声も出る。
 最低賃金は、賃金格差の是正や所得の底上げに一定の効果があるとされる。中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)は7月、早期に全国加重平均1000円(時給)を目指す政府方針も考慮し、全国一律で28円増とする目安を答申。その増加率は3.1%で、2016年度から19年度にかけて毎年3%程度引き上げられてきたペースに戻った格好だ。
 コロナ禍での大幅な最低賃金引き上げで懸念されるのは雇用への影響だ。特に飲食や宿泊業など経営環境悪化に苦しむ業種にとっては、業績改善の前に人件費負担が増すので、人員調整や労働時間の短縮を迫られる可能性がある。大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、「本来救うべき低賃金労働者の雇用が不安定にならないか注視する必要がある」と警鐘を鳴らす。
 政府は、賃上げをする中小企業を支援するため、事業主が従業員に支払う休業手当の一部を支給する雇用調整助成金の助成率を引き上げる特例措置を年末まで延長することを決定。さらに、賃上げと生産性を高めるための設備投資をした企業に助成する業務改善助成金の支給上限額の引き上げなども打ち出した。
 ただ、こうした施策で十分かどうかは不透明だ。労働経済学が専門の川口大司・東大大学院教授は、「(政府の政策は)雇用主を支援するもので、労働者を直接保護するものではない」と指摘。雇用への影響を見ながら、必要に応じ追加の支援策を検討することも求められそうだ。 (C)時事通信社