新型コロナウイルス感染拡大の勢いが止まらない。感染力が強いインド由来のデルタ株のまん延で、ワクチン接種を頼みの綱に「第5波」を8月末までに収束させるシナリオは崩れた。政府は緊急事態宣言の対象拡大と延長に踏み切るが、効果は見通せず、専門家からは「いつ感染が下火になるか全く予測できない」と悲痛な声が漏れる。
 政府が重視してきたのは、第5波の中心地・東京都の感染状況だ。ワクチン接種が進んで感染防止効果が上がるという前提で、飲食店に重点を置いた対策を継続した。しかし、感染力が従来株の約2倍とも言われるデルタ株の猛威は想定を超え、8月末の宣言解除は困難と判断せざるを得なかった。
 7月12日の宣言発令以降、対策の効果が表れるとされる2週間が経過した頃から新規感染者はむしろ急増。医療提供体制が追いつかず、重症に至らない感染者が入院待ちを強いられる事例が積み上がり、「災害医療」の様相を呈する。こうした状況では、今月24日開幕の東京パラリンピックも原則無観客とするしかなかった。
 感染は時間差を置いて首都圏全体に拡大した。さらに全国各地でも悪化の傾向を示している。政府関係者は16日、「関西圏も東京と同じ状況に陥りつつある。各自治体からの宣言発令要請を受けざるを得ない」と説明した。
 ウイルスの感染力が高まる一方、「自粛疲れ」や先の東京五輪でもたらされた祝祭ムードで、各地の人出も思うようには減っていない。お盆休み中の帰省や旅行による影響が広がる恐れがあるほか、夏休みが終われば「学校現場でクラスター(感染者集団)が多発するリスク」(感染症専門家)も指摘される。
 政府分科会メンバーはデルタ株のまん延を踏まえ、「何とか人と人との接触を減らしたい」としつつ、「現状では宣言の拡大と延長しか手がない」と「手詰まり」を認める。外出禁止を含むロックダウン(都市封鎖)を可能にする法整備について「国会などで議論してほしい」と訴えるが、政府は慎重な立場を崩していない。
 出口の見えない第5波は、秋の政治日程にも影響を与えかねない情勢だ。菅義偉首相の再選が懸かる自民党総裁選や衆院解散・総選挙に向けた政局は9月5日のパラリンピック閉幕と同時に本格的に動きだす見通しだが、自民党幹部は「感染状況が改善しなければ解散はやりにくくなるだろう」と懸念を示した。 (C)時事通信社