気管支喘息治療に用いられる吸入ステロイド薬ブデソニドの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する新たなエビデンスが示された。英・University of OxfordのLy-Mee Yu氏らは多施設非盲検ランダム化比較試験PRINCIPLEで、COVID-19患者を対象に標準治療へのブデソニド上乗せの有効性を検討。標準治療群と比べブデソニド群では罹病期間が約3日短縮したと、Lancet2021年8月10日オンライン版)に報告した。

高齢の高リスク例が対象

 吸入ステロイド薬は安価で安全性も高く、COVID-19治療においては肺での抗炎症効果が期待されている。これまでの研究で外来COVID-19患者に対するブデソニドの有効性は報告されていたが、高リスク例への効果は明らかでなかった。

 PRINCIPLE試験の対象は、65歳以上または併存疾患を有する50歳以上で、直近14日以内にCOVID-19の症状(咳や味覚・嗅覚異常など)が見られるものの入院していない患者または疑い例。標準治療群、標準治療にブデソニド(800μgを1日2回、14日間投与)を上乗せする群(ブデソニド群)、他治療を上乗せする群(他治療群)に分け、オンライン上で28日間追跡した。主要評価項目は、自己申告に基づく回復(対象が初めて回復の実感を報告した日と定義)までの期間、COVID-19による入院または死亡とした。

罹病期間を2.94日短縮

 2020年4月2日に登録を開始し、2020年11月27日〜21年3月31日に4,700例を標準治療群1,988例、ブデソニド群1,073例、他治療群1,639例にランダムに割り付けた。このうち、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が陽性だった標準治療群1,069例、ブデソニド群787例、他治療群974例を一次解析対象とした。

 検討の結果、自己申告に基づく回復までの期間は、標準治療群に比べブデソニド群で2.94日短かった〔14.7日 vs. 11.8日、ハザード比(HR)1.21、95%ベイズ確信区間(BCI)1.19〜5.12)。同様に、SARS-CoV-2陰性例を含めた二次解析でも、回復までの期間は標準治療群に比べブデソニド群で2.54日短かった(13.3日 vs. 10.9日、HR1.18、95%BCI 1.07〜1.30)。

 COVID-19による入院または死亡は、一次解析では標準治療群で8.8%、ブデソニド群で6.8%〔オッズ比(OR)0.75、95%BCI 0.55〜1.03〕、推定絶対差は2.0%ポイント(95%BCI −0.2〜4.5%ポイント)だった。二次解析ではそれぞれ7.3%、5.8%(同0.78、0.57〜1.04)に発生した。有害事象は、標準治療群で4例、ブデソニド群で2例に認められた。

 以上の結果を踏まえ、Yu氏は「吸入ブデソニドの上乗せにより、COVID-19高リスク例において回復までの時間が3日短縮され、入院または死亡も2%ポイント減少する可能性が示された」と結論している。

(平山茂樹)