国立病院機構宇都宮病院呼吸器・アレルギー内科の杉山公美弥氏(同院副院長)らの研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するファイザー製ワクチンの2回目接種を受けた同院の職員を対象に前向きコホート研究を実施。接種から3カ月後のSARS-CoV-2スパイク(S)蛋白質に対する抗体価を評価した結果、高齢者や喫煙者で顕著に低下することを明らかにし、査読前論文公開サイトmedRxiv(2021年8月7日オンライン版)に報告した。今回の結果から「喫煙が抗体価に最も影響を及ぼす因子であり、SARS-CoV-2ワクチン接種前の禁煙によりワクチンの有効性が改善する可能性がある。また、予備的な研究から、50歳以上の人に対しては6カ月ごとにSARS-CoV-2ワクチン接種が必要である可能性も示唆された」としている。

抗体価に及ぼす因子を検討、既往歴、生活習慣病など

 研究グループは、予備的研究として2回目のSARS-CoV-2ワクチンを接種した50~60歳代(中央値57歳)6例の抗体価の推移を調べた。その結果、2回目接種から2週間後の抗体価の中央値は2,140U/mLだったが、接種から3カ月後には3分の1~5分の1に低下したことを確認。うち2例では、1回目接種後と同程度の220U/mLまで低下していた。

 そこで、生活習慣や慢性疾患の有無などワクチン接種後の抗体価に影響する因子を検証する前向きコホート研究を実施した。

 対象は、予備調査で対象となった6例を含め、今年(2021年)2~3月にSARS-CoV-2ワクチンの2回目接種を完了した同院の32~54歳の職員378例(年齢中央値44歳、男性123例、女性255例)。このうち、57%は看護師(177例)と医師(38例)だった。

 対象者の血液を採取し、2回目のワクチン接種から3カ月後にSARS-CoV-2 S蛋白質に対する抗体価を測定。対象者にアンケートにより既往歴、生活習慣病、喫煙などの生活習慣に関する聞き取りを行い、これらと抗体価との関連を検討した。

60~70歳代では抗体価が20歳代の半分に

 年代別に解析した結果、抗体価の中央値は、20歳代の男性、女性ではそれぞれ942U/mL、1,095U/mL、30歳代では821U/mL、991U/mL、40歳代では710U/mL、827U/mL、50歳代では449U/mL、685U/mL、60~70歳代では490U/mL、519U/mLだった。60~70歳代では抗体価が20歳代の半分にとどまるなど、年齢と抗体価には強い負の関係が認められた。また、男性より女性の方が抗体価は高い傾向が見られ、研究グループは「各年齢層で抗体価は、男性は同じ年齢層の女性より低い傾向が見られたが、その差は有意ではなかった」とした。

 抗体価に影響を及ぼす因子について検討したところ、高齢、男性、喫煙歴、アトピー性皮膚炎を含む皮膚アレルギー、糖尿病、高血圧が抽出された。糖尿病や高血圧は年齢によって有病率が異なる可能性があるため、年齢調整後の抗体価に及ぼす危険因子を分析した。

 その結果、喫煙歴が危険因子として抽出された。抗体価の中央値は喫煙歴あり群では528U/mL、喫煙歴なし群では825U/mLだった。非喫煙者、禁煙者(元喫煙者)、現喫煙者の年齢調整後の抗体価中央値(同世代中央値を基準にして高い場合はプラス、低い場合はマイナスと記載)は、非喫煙者が+90U/mL、禁煙者がマイナス162U/mL、現喫煙者がマイナス271U/mLと、非喫煙者と比べ、現喫煙者では抗体価が361U/mL低値になった一方で、禁煙者では109U/mL上昇し、リスクが低下した。この結果について、研究グループは「禁煙が抗体価の低下リスクを低減することを示唆している」とした。

50歳以上の人には半年ごとにワクチン接種が必要?

 以上の結果を踏まえ、研究グループは、3つの重要な知見が得られたと結論。「ワクチン接種直後の抗体価に影響を及ぼす因子として、年齢、性、飲酒が報告されているが、今回の研究では接種3カ月後の影響因子は年齢(高齢)と喫煙であり、禁煙者(元喫煙者)より現喫煙者で抗体価が有意に低値だった」とした。

 なお、予備的研究の6例中2例は抗体価が220U/mLであり、ワクチンの2回目接種直前に観察されたレベルと同等のレベルであった。研究グループは、「50歳以上では6カ月ごとにSARS-CoV-2ワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)の接種を要する可能性を示唆している」との見解を示した。

 一方で、研究グループは、「研究の対象者数は限られており、COVID-19パンデミックが十分に制御されている栃木県の単一の医療機関で全ての医療従事者がSARS-CoV-2ワクチンの接種を受けた。したがって、研究で得られた結果は、広い規模あるいは日本国内で一般化できない可能性があり、さらなる研究が必要である」と付言している。

(小沼紀子)