東京電力福島第1原発事故の後、風評被害で激減した福島県産農産物の輸出が回復している。年間輸出量は2019年度まで3年連続で過去最高を更新。新型コロナウイルス禍に見舞われた昨年度も高水準を維持した。県内の農家は風評払拭(ふっしょく)に確かな手応えを感じる一方、放射性物質を含む処理水の海洋放出が決まり、新たな風評被害を懸念している。
 11年3月の東日本大震災で発生した原発事故後、コメやモモなどの福島県産農産物に対し、ピーク時には世界54カ国・地域が輸入規制を実施した。今でも中国や韓国など14カ国・地域で輸入停止などの措置が残るものの、規制解除の動きが広がるとともに輸出量は増加。19年度は305トンと、10年度の約2倍に膨らんだ。
 コロナ下の20年度はマレーシアなどで続けてきた試食販売などの販促活動が行えず、モモの輸出量が半減した。ただ、香港やシンガポールでは「巣ごもり」生活で家庭向けにコメの引き合いが強まり、全体では前年度比6.6%減の285トンと踏みとどまった。21年度はこれまでのところ、前年を上回る勢いだという。
 桑折町のモモ農家、後藤哲男さん(64)は、震災後、糖度の高い希少品種「CX(シーエックス)」の栽培に挑戦しているほか、農産物の生産管理に関する認証を取得した。苦労のかいあって「震災前より注文が多く、ファンも増えてきた」と笑う。
 コロナ禍も乗り越えつつあるが、気掛かりなのは処理水の放出。「せっかくここまで来た。これからもおいしいモモを作っていく」と前を向きつつ、「風評をぶり返すことにならなければいいが」と表情を曇らせた。 (C)時事通信社