英・University of OxfordのJamie L.Bernal氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンのインド型変異(デルタ)株に対する有効性を評価した結果、ファイザー製およびアストラゼネカ(AZ)製のワクチンの2回接種を完了した人で高い効果が確認されたとN Engl J Med2021; 385: 585-594)に発表した。ファイザー製では88.0%、AZ製では67.0%だった。ただし、ワクチンを1回しか接種していない場合、デルタ株への効果はファイザー製が約36%、AZ製が約30%であり、アルファ株への効果(48.7%)と比べて顕著に低かった。

イングランド予防接種登録簿のデータを使用

 SARS-CoV-2のデルタ株は、インドでの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の急増の原因となった変異株である。現在では英国をはじめ世界中で検出されているが、デルタ株に対するワクチンの有効性は不明であった。

 Bernal氏らは今回、アストラゼネカ製のアデノウイルスベクターワクチン(ChAd)とファイザー製のmRNAワクチン(BNT)のデルタ株に対する有効性を評価するため、2つのアプローチを行った。

 まずは検査陰性デザイン(Test negative case control design)を用いて、デルタ株が流行し始めた期間における、デルタ株または英国型変異(アルファ)株によるCOVID-19に対する両ワクチンの有効性を評価した。

 検査陰性デザインはインフルエンザワクチンの評価などで用いられ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の陽性者をケース、陰性者を対照と設定する手法である。今回は、症状のあるCOVID-19患者と症状を訴えながらも検査結果が陰性であった者でワクチン接種状況を比較した。各変異株はシークエンス解析によりスパイク蛋白質の変異を基に同定した。

 さらに、COVID-19症例のデータを用い、患者のワクチン接種状況に応じて、いずれかの変異株によって発症した症例の割合を推定した。

 ワクチン接種については、イングランドの全国予防接種登録簿(National Immunisation Management System)を用いて、5月16日までに行われたワクチン接種に関するデータを抽出した。接種状況により、1回目の接種後21日以上経過してから2回目の接種の前日までに症状が現れた例は1回接種、2回目の接種後14日以上経過して症状が現れた例は2回接種に分類。ワクチン未接種者およびワクチン接種後4~13日以内に症状が出現した者と比較した。

 陽性例については、2020年10月26日~21年5月16日までの全てのPCR検査陽性例のデータを抽出。症状が報告された陰性例のデータも検査陰性デザインの症例対照分析のために抽出した。なお、2021年3月21日時点で16歳未満の小児は除外し、症状が出てから10日以内に検査を受けた例のみを対象とした。

2回接種では有効性の差わずか

 対象となった1万9,109例(アルファ株1万4,837例、デルタ株4,272例)を解析した結果、いずれかのワクチンを1回接種した場合の有効性は、アルファ株に対する48.7%(95%CI 45.5~51.7%)と比べ、デルタ株では30.7%(同25.2~35.7%)と顕著に低かった。アルファ株に対しデルタ株への有効性の絶対差は、ファイザー製では−11.9ポイント、AZ製では−18.7ポイントだった。

 ワクチン別に見たデルタ株に対する有効性の推計値は、ファイザー製が約36%、AZ製ワクチンが約30%と、両ワクチンで類似していた。

 一方、2回接種の有効性は変異株間の差がわずかで、ファイザー製ではアルファ株に対し93.7%(95%CI 91.6~95.3%)、デルタ株に対しては88.0%(同85.3~90.1%)、AZ製ではそれぞれ74.5%(同68.4~79.4%)、67.0%(同61.3~71.8%)であった。

 今回の研究結果について、Bernal氏らは「ワクチンの2回接種推進の重要性を支持する結果である」と結論している。

(今手麻衣)