日本政府が発行する新型コロナウイルスワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の活用が伸び悩んでいる。受け入れ国は7月下旬の導入時の7カ国から3倍ほどに広がったものの、ビジネス往来の多い米国本土や中国は含まれず、東南アジアも実質的に対象外。日本側が「入国後14日間の待機」を維持するなど水際対策を緩和できないことが背景にある。
 接種証明書を持っていれば、海外渡航の際に入国時の隔離や陰性証明の提出が免除されるなどの優遇措置を受けられる。先月26日に全国の市区町村窓口で申請の受け付けを開始。外務省は当初、利用可能国に関して「約30カ国と話がついている」と説明していたが、20日時点で23カ国・地域にとどまっている。
 交渉が難航している一因は外交上の「相互主義」だ。外務省によると、日本からの入国者に優遇措置を取るのと引き換えに、自国民の日本訪問時に便宜を図るよう求める国が少なくない。
 米国の場合、連邦政府が接種証明の仕組みを導入しておらず、日本の証明書を承認しているのは現時点で北マリアナ諸島とグアムのみ。中国もワクチン接種に基づく優遇策を取っていない。
 国内の利用者からも「帰国時に14日間の隔離を求められるので使いづらい」との声が出ている。ただ、「第5波」のさなか、ペルー由来の「ラムダ株」が国内で初確認されたこともあり、現状で水際対策は緩められない。
 経済界などから接種証明書の積極活用に期待する声が上がるものの、政府関係者は「海外との往来を活発にするという議論はまだ世論の理解を得られない」と漏らす。当面は証明書の運用実績を少しずつ積み重ねる考えだ。 (C)時事通信社