車いすでも駅員の介助無しに1人で電車に乗り、好きなところで途中下車したい―。当たり前のニーズに応えるため、鉄道各社は車両とホームの間の段差や隙間を埋め、車いす単独の乗降を可能にする取り組みを進めている。東京パラリンピックを見据え、国土交通省が段差・隙間の目安値を設けたことで整備が加速。センチ単位の工夫が障害者の自由な移動を後押しする。
 車いす利用者が1人で鉄道を乗り降りするには、ホームの乗車口付近をスロープ状にかさ上げして車両の床となるべく同じ高さにし、車両との間にゴムを取り付け隙間を狭める必要がある。沖縄都市モノレールや大阪メトロが先行して採用した。
 国交省は2018年、この方式を広めるため、車いす利用者23人による乗降車実験を実施。車両とホームが接触せず、利用者の約9割がスムーズに乗り降りできた「段差3センチ、隙間7センチ」(コンクリート敷きの線路で直線ホームの場合)を目安値に設定した。
 これにより各事業者は対策を急ぎ、同じ条件の線路とホームがある全国1290駅のうち、少なくとも1カ所の乗車口が目安値を満たす駅は、20年10月時点で623カ所に達した。今年6月には東海道新幹線の東京駅でも導入。障害者団体「DPI日本会議」の佐藤聡事務局長は「駅員の介助を待つことがなくなり、(乗車中の)急なルート変更もできるようになった」と歓迎する。
 情報提供も盛んだ。交通エコロジーモビリティ財団は6月、駅のバリアフリー情報を扱うサイト「らくらくおでかけネット」に、段差・隙間の情報を追加。出発地と目的地を入力すると、利用する駅で目安値を満たした乗車口を確認でき、全国の駅に対応している。
 JR東日本は20年夏ごろから、目安値を満たした乗車口の床面やホームドアをピンク色で目立たせている。国交省は他の鉄道事業者にも導入を働きかけ、これまでに東京メトロや東急電鉄が採用。同省担当者は「車いす利用者が乗降しやすい場所を健常者にも分かるようにすることで、乗車口付近を空けるなど配慮してもらえれば」と話す。 (C)時事通信社