厚生労働省は本日(8月20日)、国内の新型コロナウイルス(SARS-2-CoV)ワクチン開発の進捗状況に関する情報を更新し、公式サイトに発表した。国内で開発中のものは5製剤。アンジェス/大阪大学/タカラバイオによるDNAワクチンは、昨年(2020年)12月に第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を、高用量の同ワクチンは今月、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験をそれぞれ開始。残る4製剤は今年または今年度中に第Ⅲ相試験を開始する予定としている。

組み換え蛋白ワクチンはアジュバントを変更し第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験に着手

 今回公表されたのは、国内で開発中のSARS-2-CoVワクチン5製剤、海外での6製剤、日本医療研究開発機構(AMED)で開発を支援中の1製剤。

 国内で開発中のものは①組み換え蛋白ワクチン(塩野義製薬/国立感染症研究所/UMNファーマ)②mRNAワクチン(第一三共/東京大学医科学研究所、VNPセラピューティクス)③DNAワクチン(アンジェス/大阪大学/タカラバイオ)④不活化ワクチン(KMバイオロジクス/東京大学医科学研究所/国立感染症研究所/医薬基盤研究所)-である(表1)。

表1. 国内における主なコロナワクチン開発状況

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 ①の組み換え蛋白ワクチンは、遺伝子組み換え技術を用いてSARS-2-CoVの抗原を作製しヒトに投与する。今年8月、アジュバントを変更した製剤における第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験が始まったばかりだ。特例承認後の生産体制として、今年度末までに3,000万人分を見通している。

 ②のmRNAワクチンは、日本を含め世界で接種が進んでいるファイザー製およびモデルナ製と同じタイプ。mRNAは、他のワクチン製剤に比べ合成が容易で、大量生産が可能である。現在、両ワクチンは米国からの輸入に頼っているが、国内で開発に成功すれば安定供給が期待できる。

不活化ワクチンは第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を施行中

 ③のDNAワクチンは、スパイク蛋白質をコードするプラスミドDNAワクチン。ウイルス表面のスパイク蛋白質のみを体内に発現させて抗体を産生するため、病原性がなく安全であるとされている。昨年12月に開始の第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験に続き、今月には高用量製剤での第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を開始された。

 ④の不活化ワクチンは、SARS-2-CoVに用いるのは国内初の試みで、ワクチンメーカーのKMバイオロジクスによるもの。今年3月、20歳~64歳の健康人および65歳以上の健康高齢者における第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を始めた。

海外の開発状況:日本国内で原薬から製造も

 一方、海外での開発状況に関しては、日本で既に特例承認済のmRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)とウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ)の他、承認申請中のジョンソン・エンド・ジョンソンのウイルスベクターワクチンをはじめサノフィのmRNAワクチン、ノババックスの組み換え蛋白ワクチンの6製剤(表2、今年5月24日現在)。

 これらのうち、アストラゼネカとノババックスは原薬製造を含め日本国内で生産するための手続きを取っている。

表2. 海外でのコロナワクチン開発状況

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(表1、2とも厚労省発表資料)

 日本医療研究開発機構(AMED)で開発を支援中の製剤は米・エリクサジェン・セラピューティックスが独自に開発したmRNAワクチンで、第Ⅰ/Ⅱ相試験が今年5月に藤田医科大学で開始した。

COVAXファシリティを介し国際的に公平な供給を

 SARS-CoV-2ワクチンをめぐっては、やむをえない事情により接種ができない、1回しか接種できていない、変異株の出現でブレークスルー感染を含め感染者が急増し医療崩壊の瀬戸際にあるなど、課題が山積している。

 また追加接種(ブースター接種)の必要性が叫ばれ、国内外で準備が進められている。しかし国際的に公平なワクチンの普及なしに、SARS-2-CoVを制圧するのは難しい。日本は欧米、オーストラリア、中国、韓国に先駆け、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを複数国で共同購入し、公平に分配するための国際的な枠組みCOVAXファシリティに参加。これまで台湾、インドネシアなど6カ国・地域に、日本で製造したアストラゼネカ製ワクチンを無償で提供している。

(田上玲子)

変更履歴(2021年8月24日):表の順番に基づいて本文を入れ替えました