【カイロ時事】中東の民主化運動「アラブの春」の先駆けとなったチュニジアで、サイード大統領が首相解任と議会停止を発表してから25日で1カ月。新首相の任命や議会正常化は遅れ、10年前の革命で崩壊した独裁体制に戻りかねないと懸念も残る。サイード氏は今後の国家運営の方向性を明示しておらず、政治の混迷が収拾するめどは立たない。
 サイード氏は7月25日、新型コロナウイルスの感染拡大に対する政府の無策などに抗議するデモを受け、メシシ首相を解任し、議会も30日間停止すると突如表明した。「憲法規定に沿った措置」と正当化したが、議会最大勢力でサイード氏と対立するイスラム政党アンナハダは「クーデター」だと猛反発している。
 AFP通信によると、議会停止で免責特権を失った議員や実業家らの国外渡航が禁じられ、逮捕や自宅軟禁が相次いでいる。大統領府は今月23日夜、声明を出し議会停止期間の延長を宣言し、サイード氏の強権的手法が目立ちつつある。
 チュニジアでは2011年の「ジャスミン革命」でベンアリ独裁政権が倒れ、民主化の成功例と評された。しかし、その後も経済不振が続き、閉塞(へいそく)感を募らせる若者らの欧州密航やイスラム過激派への合流が社会問題化。対策を打ち出せない政府や、政争に明け暮れる既存政治家への不信感が強かった。
 7月末に公表された世論調査では、国民の87%がサイード氏の決定を支持した。だが、事態を好転できなければ、同氏の責任を追及する声が高まりかねず、「時間がたつにつれて人気が陰る可能性もある」(地元記者)と指摘されている。 (C)時事通信社