東京パラリンピックに向け、国や自治体などは障害を持つ人や高齢者が移動、居住しやすいバリアフリーの環境整備を進めてきた。2000年の「交通バリアフリー法」成立をきっかけに、20年あまりでハード面の整備は大きく前進。最近では、障害者らの問題を自らの問題ととらえ、積極的に支援する「心のバリアフリー」が課題となっている。
 ◇「違う国のよう」
 交通バリアフリー法は、駅やバスターミナルなどの新設・改修時にエレベーターやエスカレーターを設置して段差を解消するなど基準への適合を義務付ける内容。成立当時は「大きな駅でも整備されていないのが当たり前」(国土交通省幹部)で、東京駅の新幹線ホームにさえ乗客用エレベーターはなかったという。
 国交省は法制化とセットで、国、自治体、事業者で整備費用を負担し合う制度を構築。約10年間の実施目標も立て、計画的に進めてきた。
 建築物の分野でも02年に「ハートビル法」を改正。病院や百貨店、ホテルなど不特定多数の人が使う施設を新改築する際、通路の幅を広くしたり段差をなくしたりする措置を義務付けた。06年には二つの法律を一本化した「バリアフリー法」も制定された。
 この結果、施設整備は着実に進展。段差が解消された旅客施設の割合は00年度の28.9%から、19年度は91.9%に増えた。障害者団体「DPI日本会議」事務局長で車いす利用者の佐藤聡さんは「まるで違う国にいるみたいに圧倒的に変わった。この20年で交通事業者の意識が大きく変化した」と振り返る。
 ◇当事者参画を法制化
 18年のバリアフリー法改正では、障害者や高齢者らが国の施策の評価に参画する仕組みも導入。パラリンピックのメイン会場となる国立競技場の設計・施工で当事者の意見を反映させるワークショップを作ったのがきっかけだ。「お互いが知恵を出し合う」(赤羽一嘉国交相)のが狙いで、佐藤さんは「どんな施設が使いやすいか、われわれに聞けばすぐ分かることは多い」と、この仕組みを評価する。
 ただ、障害者らの自由な移動には、ハードだけでなく身近な人の理解や支援も欠かせない。20年の同法改正では「心のバリアフリー」を打ち出し、車いすの介助体験など学校教育と連携した啓発活動の推進を盛り込んだ。
 「海外に比べると、日本では駅で困っている人に声をかけるのを遠慮しがち」と国交省幹部。パラリンピックも追い風に「自然に助け合うように人々の意識が変わっていけば」と話している。 (C)時事通信社