藤田医科大学新型コロナウイルス対策本部長の土井洋平氏と大学院保健学研究科の藤垣栄嗣氏は、昨日(8月25日)オンラインで開催した記者会見で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの1回目接種から約3カ月後に、血液中の免疫グロブリン(Ig)G抗体価が4分の1に低下したとする研究結果を発表した。土井氏は「国内外で同様の結果が報告されており、われわれの研究でも類似したトレンドを示した。抗体価の低下は予想の範囲内で、ワクチンの有効性が4分の1に低下することを示すものではない」と強調した。追加接種(ブースター接種)の必要性に関しては「今回の結果だけで判断はできない」とした。

経時的な免疫の減衰、デルタ株が影響

 研究対象は、ファイザー製のSARS-CoV-2ワクチンを接種し、接種前から接種後3カ月後までの血液が採取できた同大学の20~70歳代の教職員209例(男性67例、女性142例)。対象者の血液を採取し、ウイルス中和抗体と強く相関する受容体結合ドメイン(RBD)に対するIgG抗体の量を測定した。なお、対象の平均年齢は開示していない。

 IgG抗体価を測定した時期は、①ワクチン接種前②1回目接種後約14日目③2回目接種後約14日目(1回目接種後約42日目)④1回目接種約3カ月後―とした。測定試薬はアキュラシードCOVID-19抗体を用いた。

 解析の結果、抗体価の平均値は1回目接種後と比べ2回目接種後に全例で上昇(11.8U/mL→245.4U/mL)。一方、1回目接種から3カ月後には65.9U/mLと約4分の1にまで低下した。ただし、IgG抗体価の平均値はばらつきが大きく、標準偏差(SD)は1回目接種後が13.0U/mL、2回目接種後が154.2U/ml、接種3カ月後が44.6U/mだった(図1)。

図1. ワクチン接種後のIgG抗体価の推移

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 結果について土井氏は「2回目接種後はIgG抗体価が大幅に上昇することが分かった。1回目接種後約3カ月の時点で急激な減衰が見られ、その後は少しずつ低下した。ただし、自然感染後に比べ高い抗体価が維持されていた」と説明した。一方、抗体価の低下の程度について、藤垣氏は「2回目接種後に抗体価が高い例では3カ月後も集団の中では高い傾向が見られた」とした。

 抗体価が低下した理由について、土井氏は「まずワクチン接後、時間の経過とともに獲得された一時的な免疫が減衰したこと。さらに、新たな要因としてSARS-CoV-2のインド型変異(デルタ)株の感染流行が加わってきたことが挙げられる」と考察した。

 同氏は、最近海外から報告されているワクチン接種後のブレークスルー感染への懸念についても考えを示した。「現時点で明らかになりつつあるのは、ワクチンの2回目接種後にブレークスルー感染を起こした場合、発熱などが生じることがある。しかし、ワクチン接種完了者では、感染の刺激で記憶が呼び起されて数日間、抗体価が上昇する。そのため、大半が軽症や無症状で済んでいる」と解説した。その上で、「接種できる人はワクチンを接種して、重症化して入院に至るリスクを少しでも減らすことが大事」との見解を示した。なお、同大学職員では、まれだがブレークスルー感染例が発生しているものの、全ての例が極めて軽症だという。

研究期間中の抗体価は60~70歳代は50歳代より低い傾向

 年齢別、性別でも抗体価について解析。その結果、60~70歳代の抗体価は全ての時期で50歳代より低い傾向にあったが、接種3カ月後には全ての年代で抗体価の平均値が大幅に低下した。

図2. 年齢別に見たIgG抗体価の推移

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(図1、2とも藤田医科大学の記者会見資料より抜粋)

 また、性別の平均値の推移を比較したところ、2回目接種後と接種3カ月後で女性の方が抗体価は高い傾向にあったが、接種3カ月後には男女とも大幅に低下した。

 土井氏は「測定したIgG抗体はウイルスの感染や増殖を抑制する中和活性と高い相関があるため、今回の結果からワクチンの効果は経時的に低下している可能性がある」と指摘。ただし、ワクチンの効果は抗体産生だけでなく、液性免疫、細胞性免疫などが関与して感染予防につながることから、同氏は「今回は有効性の指標の1つである抗体産生について、IgGという1つの抗体を評価しただけなので、今回の結果だけで3回目接種(ブースター接種)の必要性の有無は判断できない」との考えを提示した。

 抗体価の低下に関連する因子についても言及。藤垣氏は「今回の研究は対象が少ないこともあり、有意差が出るような因子は見つかっていない」と断った上で、「年齢と性別は2回目接種後に有意差が認められた」と述べた。

 両氏は「抗体価の低下がどの程度ワクチンの発症予防効果、重症化予防効果などの低下を示しているかは、今後も検証が必要」とし、半年後、1年後も血液を採取して、抗体価を定期的に調査する予定だという。

(小沼紀子)