乳がん検診における超音波検査の意義を検証した、世界初・日本発の大規模ランダム化比較試験J-STARTの結果がLancet(2016; 387: 341-348)に掲載されてから5年以上が経過した(関連記事「世界初・日本発、乳がん検診の大規模RCT」)。東北大学大学院客員教授の大内憲明氏らのJ-START研究グループは今回、その第二報として、乳房濃度別の感度、特異度解析による超音波検査を評価した結果から、乳房超音波検査がマンモグラフィの偽陰性問題を補う有用な検査法であることが示されたと報告した。詳細は、JAMA NEW Open2021; 4: e2121505)に発表された。

第一報では、介入群でがん発見率が1.5倍に

 マンモグラフィによる乳がん検診は、死亡率減少効果が臨床試験で証明され国際的に普及しているが、乳房濃度が高い(高濃度乳房:デンスブレスト)若年層における精度の低下が大きな課題となっている。 乳がんの超音波検査は乳房濃度に依存せず安価であり、乳がん検診への導入が期待されるが、有効性評価に関する研究は報告されていなかったことから、大内氏らは2007年に「がん対策のための戦略研究:超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験(J-START)」を開始した()。

図. J-STARTで期待されていること 

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(東北大学プレスリリース)

 J-STARTでは、40歳代の健康日本人女性7万6,196例をマンモグラフィのみを受診する非介入群(3万6,139例)と、マンモグラフィ検診に超音波検査を併用した介入群(3万6,859例)にランダムに割り付け、超音波検査の追加効果を検証した。被験者は、初回および2年後に同じ検診を受診した。

 初回検診の結果は、第一報として2015年に報告されており、がん発見数(発見率)は非介入群が117件(0.33%)であったのに対し、介入群では184件(0.50%)と約1.5倍だった(P=0.0003)。

 一方で、中間期乳がんは非介入群が35例であったのに対し、介入群では18例と約半数になっていた(P=0.034)。これに伴い、感度は非介入群の77.0%に対し、介入群では91.1%と有意に上昇していた(P=0.004)。

第二報では宮城県内の1万9,213例が対象

 今回の第二報の解析対象は、2007年10月~09年9月に宮城県対がん協会、仙台市医師会、石巻市医師会が行った乳がん検診の受診者のうち、J-STARTに参加を承諾し、研究に登録された1万9,213例(解析対象は介入群9,705例、非介入群9,508例)。介入群と非介入群における「乳房濃度別の感度、特異度解析による超音波検査の評価」についての報告が行われた。

 両群の患者背景はおおむね同様であったが、特筆すべきものとして、妊娠歴なしの割合が、介入群〔高濃度乳房の集団10.5%(95%CI 9.9~11.6%) vs. 非高濃度乳房の集団5.3%(同4.7~6.1%)、P < 0.001〕、非介入群〔同9.3%(8.8~10.4%)vs. 5.7%(5.1~6.5%)、P <0.001〕のいずれにおいても高濃度乳房の集団で高かった。

乳房の濃度にかかわらず、介入群で感度が高い

 検討の結果、がん発見件数は非介入群が38件〔スクリーニング1,000回ごとに4.0件(95%CI 2.7~5.3)〕であったのに対し、介入群では68件〔同7.0件(5.3~8.7)〕と有意に多かった(P=0.0003)。 検診1,000件ごとの中間期がん発生についても、非介入群の2.0件(95%CI 0.1~1.0件)に対し、介入群では0.5件(同1.1~2.9件)と低かった(P = 0.004)。

 超音波検査の感度を見ると、高濃度乳房の集団〔介入群93.2%(95%CI 85.7~100.0%)vs. 非介入群70.6%(同55.3~85.9%)、P<0.001)、非高濃度乳房の集団〔同93.1%(83.9~102.3%)vs. 60.9%(同40.9~80.8%)、P<0.001〕とも、介入群で有意に良好であった。

 一方、特異度については非介入群の91.8%(95%CI 91.2~92.3%)に対し、介入群で86.8%(同86.2~87.5%)と有意に低かった(P<0.001)。要精検率〔非介入群8.6%(同8.0~9.1%) vs. 介入群13.8%(同13.1~14.5%)、P<0 .001〕、バイオプシー率 〔同2.1%(1.8~2.4%) vs. 5.5%(5.1~6.0%)、P<0.001〕は、ともに介入群で高かった。

 以上の結果を踏まえ、大内氏らは「マンモグラフィ検診では乳房濃度に関らず、検出できない乳がんが存在するが、今回の結果からは超⾳波検査の追加によりマンモグラフィ偽陰性の問題は解決できることが分かった。40歳代⼥性の乳がん検診には、マンモグラフィに乳房超⾳波検査の追加が妥当と考えられる」と結論している。