高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)を要する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者において、覚醒下で腹臥位療法を行うと28日後の死亡または気管挿管への移行率が14%有意に低下したことが、大規模国際共同非盲検仰臥位対照ランダム化比較試験(RCT)の結果から分かった。フランス・Centre Hospitalier Régional Universitaire de ToursのStephan Ehrmann氏らがLancet Respir Med2021年8月20日オンライン版)に報告した。

臨床現場で注目される腹臥位療法

 COVID-19患者では急性低酸素血症性呼吸不全を特徴とする重症例が多く、侵襲的人工呼吸管理を要する割合が高い。そのような中、侵襲的人工呼吸管理を施行した中等症~重症の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者に対する腹臥位療法により、呼吸の改善および死亡率の低下が示されている。重症COVID-19患者においても、覚醒下の腹臥位療法による呼吸の改善が複数報告されている(Lancet Respir Med 2020; 8: 765-774Chest 2021; 160: 85-88Respir Care 2021年7月7日オンライン版)。

 患者の予後を検討した大規模RCTによるエビデンスは少ないにもかかわらず、臨床現場で注目されたことで、欧州呼吸器学会(ESR)の診療ガイドライン(Eur Respir J 2021; 57: 2100048)や、専門家パネルによるコンセンサスステートメント(Crit Care 2021; 25: 106Am J Trop Med Hyg 2021; 104: 60-71)では腹臥位療法が推奨されている。

6カ国の試験を統合した大規模試験

 Ehrmann氏らは今回、HFNCを要する18歳以上の重症COVID-19患者に対する覚醒下腹臥位療法の有効性について仰臥位群を対照に比較検討する6件の試験を統合し、大規模国際共同非盲検RCTを実施。データを前向きにメタ解析に取り込むという、検討結果が急がれるCOVID-19流行下に適した研究手法を導入した(BMJ Open 2020; 10: e041520)。

 カナダ、フランス、アイルランド、メキシコ、米国、スペインの6カ国において、18歳以上でCOVID-19関連肺炎による急性低酸素血症性呼吸不全の確定または臨床的に強い疑い例2,350例を登録。1,126例を抽出し、覚醒下腹臥位群(567例、平均年齢61.5歳、女性33%)と仰臥位群(559例、同60.7歳、34%)にランダムに割り付け、1,121例をintention-to-treat解析の対象とした。

28日以内の治療失敗率も有意に低減

 ベースライン時に全体の88%がグルココルチコイドを投与されており、平均酸素飽和度(SpO2)/吸入酸素濃度(FiO2)は腹臥位群が147.9〔標準偏差(SD)±43.9〕、仰臥位群が148.6(同43.1)だった。HFNC投与量の中央値は両群とも50.0L/分〔四分位範囲(IQR):腹臥位群40.0~55.0L/分vs. 仰臥位群50.0L/分(同40.0~50.0L/分)〕、FiO2中央値はいずれも0.6(同0.5~0.8)であった。

 主要評価項目である治療失敗率(28日後の死亡または気管挿管)は、仰臥位群の46.0%に対し腹臥位群は40.0%と有意に抑制されていた〔相対リスク(RR)0.86、95%CI 0.75~0.98〕。

 28日以内で見ても、仰臥位群に比べ腹臥位群で治療失敗率が22.0%有意に抑制されていた〔ハザード比(HR)0.78、95%CI 0.65~0.93、P=0.0069〕。28日以内の治療失敗率を項目ごとに見ると、気管挿管は腹臥位群で25.0%有意に抑制されていた(同0.75、0.62~0.91、P=0.0038)ものの、死亡に有意差はなかった(同0.87、0.68~1.11、P=0.27)。

 さらに腹臥位群では、28日以内のHFNCからの離脱率が有意に高いことも示された(HR 1.19、95%CI 1.01~1.39、P=0.035)。

 有害事象の発現率は皮膚の損傷(腹臥位群1%、仰臥位群2%)、嘔吐(同3%、3%)、中枢神経系または動脈圧の脱落(同5%、3%)、心停止(同1%、0%)といずれも低く、両群で同程度だった。

少なくとも1日8時間は腹臥位維持を

 以上の結果を踏まえ、Ehrmann氏らは「COVID-19関連ARDS患者において、覚醒下での腹臥位療法は治療失敗の発生を抑制し、有害事象への懸念が小さく気管挿管リスクを低減させることが示された。今回の結果は、HFNCを必要とするCOVID-19患者のルーチンな覚醒下体位を支持するもの」と結論。「少なくとも1日8時間は患者が腹臥位を維持できる管理体制を取ることが重要である」と付言している。

(田上玲子)