自民党総裁選(9月17日告示、同29日投開票)に出馬する岸田文雄前政調会長は27日、各派幹部と相次いで面会し、支持を訴えた。現段階では他派閥の支援を得られるか見通せないが、菅義偉首相(党総裁)の内閣支持率は新型コロナウイルス対応への不満から最低水準に落ち込んでいる。岸田氏は衆院選への不安を抱える中堅・若手議員らを中心に、首相に対する批判の「受け皿」となることで活路を見いだしたい考えだ。
 岸田氏は27日、衆院議員会館で最大派閥・細田派の細田博之会長、麻生派の甘利明党税調会長、石破派の鴨下一郎代表世話人らの事務所を訪問。細田氏は「総裁選で政策論争をやってください」と求めた。
 党本部では、二階派会長の二階俊博幹事長に「立候補します」と伝えた。二階氏は「難しい選挙だが党勢拡大のためにぜひ頑張ってくれ」と応じた。岸田氏は26日の出馬表明の記者会見で、幹事長在任が5年を超える二階氏を念頭に、党役員任期を「最長連続3年」とする公約を掲げたが、この日は触れなかった。
 岸田氏は、衆院選へ強まる党内の危機感を背景に首相との対決軸を鮮明にしている。26日の会見では、(1)コロナ対応は自ら丁寧に説明する(2)党役員に中堅・若手を積極登用する(3)自助の精神は大切だが、みんなで助け合う社会を目指す―ことなどを打ち出した。
 昨年9月の総裁選に敗北し「『岸田はもう終わった』と厳しい評価もいただいた」と振り返りつつ、1冊のノートを掲げて「国民の声を一つ一つ書き留めてきた」と強調。説明が棒読みだと批判される首相を意識したのか「国民の声に耳を澄まし、政治生命を懸けて新しい政治の選択肢を示す」と強い決意を示した。
 岸田氏の会見については、「発信力が課題」と指摘された昨年の前回総裁選時と比べて、「一皮むけた」(党関係者)と感じ取る向きもある。細田派の中堅議員は「岸田氏に風が吹くかもしれない」と語り、「反菅票」の受け皿になり得るとの見方を示した。
 ただ、岸田氏以外にも出馬を模索する動きは続いており、構図は固まっていない。現状は対抗馬として真っ先に名乗りを上げた岸田氏に注目が集まっているに過ぎず、岸田派内では「比較対象が菅首相だからラッキーなだけ」(ベテラン議員)と気を引き締める空気が強い。
 細田、麻生、竹下各派は情勢を見極めつつも、前回総裁選と同様に首相支持を打ち出す方向を模索している。だが、竹下派幹部は、中堅議員から「岸田氏を支えたい」と相談され、容認したと明かした。二階派幹部も「今回はこぼれるメンバーがいても仕方ない」と語っているという。 (C)時事通信社