新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、日本企業の一部で接種を済ませた従業員にマークを着けさせるなどの動きが出ている。接種証明書で経済活動を活発化させることには歓迎の声も多い。ただ、過度なワクチン推奨は、接種を望まない従業員の不利益につながりかねず、多くの企業は慎重だ。
 外食大手ワタミは、ワクチン接種済みの社員に店内でマークを表示させる方針だ。接種を望まない社員には定期的にPCR検査を受けてもらう。家電量販大手ノジマは、今月初旬から接種済みの従業員にシールを配布し、店頭で接客する販売員を中心に任意で身に着けている。長期化するコロナ禍に対し、両社は安心して来店してもらうことで収益回復につなげる意向だ。
 経団連は国民にワクチン接種を促すため、接種証明書の提示による飲食店などでの特典付与や各種イベントへの優先入場を提言。菅義偉首相も25日の記者会見で、証明活用の検討を明言した。企業からは「安全安心な旅行や、スムーズな往来に寄与することが期待できる」(日本航空)など前向きに受け止める声が多く上がる。
 感染力の強いデルタ株の広がりを受け、米国企業などでは従業員にワクチン接種を義務付ける動きが拡大している。日本では接種証明活用に賛同しても、従業員に接種を迫ることには及び腰だ。日本の改正予防接種法で接種は国民の努力義務とされ、各自の意思に委ねられている。接種していない人が職場で差別などの不利益を受けないよう配慮することも求められており、法制度のハードルは高い。
 企業では「推奨はするが強制はしない」(イオン)などの姿勢が大勢を占める。個人意思の尊重や非接種者への差別回避のほか、「副反応のリスクに対し会社として責任が持てない」(大手住宅メーカー)との指摘もある。大手企業幹部は「国が義務付けなどの方針を出さない以上、強制することなどできない」と打ち明ける。 (C)時事通信社