食道がんに対する化学放射線療法は有効な治療法の1つであるが、治療後にしばしば再発が認められる。九州大学、東京大学医科学研究所、国立がん研究センターの研究グループは、化学放射線療法の効果が低く再発しやすい難治性食道がんについてゲノム異常の特徴や、再発に至るがんゲノムの変化の過程を解明。詳細をCancer Res2021年8月19日オンライン版)に報告した。がんゲノム情報に基づく化学放射線療法における個別化医療・精密医療の開発や、難治性食道がんの新たな治療開発につながることが期待されるという。

治療前のMYC遺伝子コピー数増加例では治療効果が低い

 がんは単一の細胞に由来するが、進行とともにゲノムが多様化し、不均一な細胞集団となる。このような不均一性を生むがんゲノムの変化は治療抵抗性の一因とされ、治療後にいったん縮小しても、ドライバー遺伝子異常を持つ細胞が生き残り、再び増殖してやがて再発する(図1)。

図1. 治療抵抗性がんの仕組み

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しかし、その詳細は解明されていない。

 研究グループは今回、食道がん患者33例から化学放射線療法施行前に55件の腫瘍サンプルを採取し、そのうち5例の再発腫瘍から次世代シークエンサーを用いて包括的ゲノムデータを取得し、スーパーコンピュータを用いた数理統計解析を行った。

 その結果、治療前にMYC遺伝子のコピー数が増加している食道がん患者では治療効果が低いことを明らかにした(図2)。

図2. MYCコピー数別に見た全生存率 

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(図1、2とも九州大学プレスリリース)

 さらに再発腫瘍のゲノムについて時空間解析をした結果、がんの進展に重要な役割を果たすドライバー遺伝子異常を持つがん細胞は治療後も生き残って再発の源になること、再発時に新たに獲得するドライバー遺伝子異常は少数であること、がんゲノムの変化に治療が影響することも明らかとなった。

 研究グループは、今回の結果を踏まえ「食道がんを含む多くのがんが化学放射線療法後に再発する原因はよく分かっていなかったが、そのメカニズムの一端を明らかにした。がん細胞は治療による過酷な環境にしたたかに適応しながら変化し、生き残った細胞が再発の原因となる。本研究が難治がんの克服に少しでも役立てば」と述べている。  

編集部