世界に先駆け新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2)ワクチンを導入したイスラエルから、ファイザー製メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン(トジナメラン)の安全性を検証した大規模研究の結果が発表された。Clalit Health Services(CHS)のNoam Barda氏らは、トジナメラン接種者88万例超のデータを非接種者とマッチングし、有害事象ごとに安全性を評価。接種者でわずかながら心筋炎のリスク上昇が認められたものの、SARS-CoV-2感染によるリスクに比べて低かったと、N Engl J Med2021年8月25日オンライン版)に報告した(関連記事:「トジナメラン、2回接種の有効性95%超」)。

心筋炎、リンパ節腫脹などがわずかに増加

 Barda氏らはまず、イスラエル最大規模のヘルスケア組織であるCHSに登録されたトジナメラン接種者のデータを、社会人口統計学および臨床上の変数により同数の非接種者と個々にマッチングした(ワクチン接種コホート)。その上で、接種後42日時点における有害事象イベントのリスク比(RR)およびリスク差(RD)を算出し、トジナメランの安全性を評価した。

 さらに、SARS-CoV-2感染者と非感染者も同様にマッチングし(SARS-CoV-2感染コホート)、診断後42日間における同一の有害事象に対するSARS-CoV-2の影響を評価した。

 ワクチン接種コホートの対象は、接種群と非接種群が各88万4,828例だった。非接種群に対する接種群のRDは、心筋炎が2.7例/10万人(RR 3.24、95%CI 1.55〜12.44)、リンパ節腫脹が78.4例/10万人(同2.43、2.05〜2.78)、虫垂炎が5.0例/10万人(同1.40、1.02〜2.01)、帯状疱疹が15.8例/10万人(同1.43、1.20〜1.73)だった()。

表.トジナメラン接種の有無別に見た有害事象イベント発生数

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 SARS-CoV-2感染コホートの対象は、感染群と非感染群各17万3,106例だった。非感染群に比べ、感染群では心筋炎(RR 18.28、95%CI 3.95〜25.12、RD 11.0例/10万人)、急性腎障害(同14.38、9.24〜28.75、125.4例/10万人)、肺塞栓症(同12.14、6.89〜29.20、61.7例/10万人)、頭蓋内出血(同6.89、1.90〜19.16、7.6例/10万人)、心膜炎(同5.39、2.22〜23.58、10.9例/10万人)などのリスクが上昇した。の通り、RDはほとんどの有害事象でSARS-CoV-2感染後がトジナメラン接種後を上回った。

図. トジナメラン接種後とSARS-CoV-2感染後におけるRDの比較

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(表、図ともN Engl J Med 2021年8月25日オンライン版)

 これらの結果について、Barda氏らは「全国規模のワクチン接種者を対象とした研究において、トジナメラン接種とほとんどの有害事象発現リスク上昇との間に関連は認められなかった」と結論。「心筋炎のリスク上昇が認められたものの、心筋炎を含む複数の重篤なイベントの発生リスクはSARS-CoV-2感染後に大幅に上昇した」と指摘した。

(平山茂樹)