日本神経学会は8月27日、神経筋疾患患者へのワクチン接種に関する国内外のエキスパートオピニオンを踏まえた「COVID-19ワクチンに関する日本神経学会の見解」の第4版を公開した。改訂版では、アストラゼネカ製の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(商品名バキスゼブリア)の効果と接種時の注意点が追加され、最近話題となっている異種混合接種についても「今後、さらなる検証結果が示されると思われる」と言及している。

40歳以上に対し接種を推奨

 同学会は今年(2021年)4月、「COVID-19ワクチンに関する日本神経学会の見解(第1版)」を公開している(関連記事「神経疾患へのコロナワクチン接種指針」)。6月に公開された第3版では、神経筋疾患で筋萎縮が著明な患者に対するワクチン接種に関しての見解が付加され、今回の改訂ではアストラゼネカ製ワクチンの効果と接種時の注意点に関して設問が追加された。

 設問の冒頭では、アストラゼネカ製ワクチンについて原則40歳以上が予防接種法に基づく接種対象となった背景について解説。極めてまれに生じる血栓症の副反応が報告されていたことから公的な予防接種には使用されていなかったが、①接種が進んでいない40〜50歳代で重症者が増えている②英国では40歳未満に他のワクチンを推奨した上で公的な接種に使用している③「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き」が公開された(関連記事「コロナワクチン接種後血栓症の手引き改訂」)―ことなどを受け、「40歳以上は接種によるベネフィットがリスクを上回ると判断された」と記載している。

 ワクチンの特徴と接種方法については、①感染の急拡大を受けて公的予防接種に加えられ、8月下旬から接種が開始されるウイルスベクターワクチン②接種対象者は原則40歳以上だが、mRNAワクチンを接種できない者、海外でアストラゼネカ製ワクチンを1回接種済みの日本在住者も対象となる見込み③2回接種が必要で、4~12週の間隔を空けて2回目を接種(最大の効果を得るためには8週以上の間隔)④接種不適当者には従来項目(発熱、重度の急性疾患、ワクチン成分に対する重度の過敏症の既往歴、その他の理由で予防接種が不適当)に加え、「SARS-CoV-2ワクチン接種後に血小板減少症を伴う静脈もしくは動脈の血栓症の既往歴」「毛細血管漏出症候群の既往歴」が追加された―と解説されている。

重篤な血小板減少症を伴う血栓症の報告も

 有効性については、接種群と対照群のCOVID-19発症率を比較した臨床試験で70.4%の有効率が示されている(Lancet 2021; 397: 99-111)ことを紹介。変異株については、「英国型変異(アルファ)株に対しては従来株と同等の効果が認められたが、インド型変異(デルタ)株では発症予防効果が60%に低下したという報告がある(Lancet 2021; 397(10282): 1351-1362Lancet 2021; 397(10293): 2461-2462)」とする一方、「英国における実際の接種後の状況に基づく研究結果では、発症予防効果に係るワクチン有効率はアルファ株で約74.5%、デルタ株で約67.0%〔ファイザー製ワクチン(商品名コミナティ)有効率:アルファ株93.7%、デルタ株約88.0%〕(N Engl J Med 2021; 385: 585-594)」と補足している。

 安全性については、主要な副反応として疼痛、発熱、内出血、痒みといった局所反応、疲労、頭痛、倦怠感、筋肉痛、発熱感、悪寒、関節痛、吐き気などの全身症状があり、多くは2回目の方が減弱すること、重篤なアナフィラキシーが報告されているがmRNAワクチンにおけるアナフィラキシーの原因物質として関与が考えられたポリエチレングリコールは含まれていないことに加え、血小板減少症を伴う血栓症(TTS)について詳述している()。TTSの診断と治療に際しては、前述の診断と治療の手引きを参照し、血栓止血の専門家に相談するよう推奨している。

表. TTSに関連して特に接種の4〜28日後に注意すべき症状

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〔COVID-19ワクチンに関する日本神経学会の見解(第4版)〕

今後、異種対同種接種の検証が進むか

 また最近、異種混合接種が話題となっているが、見解でもmRNAワクチンと組み合わせた接種について付言している。1回目にアストラゼネカ製ワクチンを接種し2回目にファイザー製ワクチンを接種したところ、十分な免疫反応が得られ、重篤な有害事象は認められなかったというスペインの報告(Lancet 2021; 398: 121-130)や、アストラゼネカ製ワクチンとファイザー製ワクチンの組み合わせで異種接種と同種接種を比較した結果、同種のアストラゼネカ製ワクチンの群よりも異種接種群の方が2回目接種から28日後のSARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度が高く、免疫反応が高かったという英国の報告(関連記事「AZとファイザーのワクチン異種接種は有効」)を紹介し、「今後、異種対同種接種の安全性と免疫原性について、さらなる検証結果が示されると思われる」と結論している。

(安部重範)