デンマーク・Statens Serum InstitutのAnders Hviid氏らは、同国の11~34歳の女性99万6,300人を10年間追跡した後ろ向きコホート研究で、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種と早発卵巣不全(primary ovarian insufficiency ;POI)との関連は示されなかったとJAMA Netw Open2021; 4: e2120319)に発表した。4価HPVワクチン接種とPOIの診断に関するこれまでで最大規模の研究で、無月経と希発月経の複合アウトカムでもワクチン接種者で有意なリスク上昇は見られなかった(関連記事「HPVワクチン、重篤な副反応に関連せず」)。

不妊症への懸念がワクチン普及の妨げに

 必ずしも科学的でない安全性への懸念はマスコミやソーシャルメディアで注目される一方、多くの国でHPVワクチンの定期接種導入を阻む要因となってきた。その1つは、HPVワクチン接種がPOIによる不妊症に関連するという指摘で、2012年以降に同ワクチン接種後に発症したPOIの症例報告が相次いだ。

 その後、米国の健康維持機構(HMO)による女性19万人を対象とした観察研究(Pediatrics 2018; 142: e20180943)で、HPVワクチンとPOIとの関連は示されなかった。しかし、利用可能な研究は統計的検出力によって制限され、ワクチン接種後の不妊症への懸念はがん予防ワクチン普及の妨げになっている。

 そこでHviid氏らは、Danish Civil Registration Systemを用いて、デンマークで生まれた11~34歳の女性99万6,300人の全国コホートを構築し、2007~16年まで追跡調査した。研究開始前の死亡や転居、生殖器大手術、POI、がん、生殖器の先天性奇形などは除外。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、年齢、暦期間および受診歴から推定した傾向スコアを調整し、4価HPVワクチン接種状況によるPOI診断のハザード比(HR)を推定。データは2020年10月~21年1月に解析された。

無月経・希発月経にも有意差なし

 解析の結果、11~34歳の女性99万9,300人中、4価HPVワクチンを1回以上接種した接種群は50万5,829人(50.8%)、ワクチン非接種群は49万471人(49.2%)。初回接種時年齢中央値は14.37歳〔四分位範囲(IQR 10.02歳)〕。678万1,166人・年の追跡期間中、POIは接種群で54例、非接種群で90例、計144例診断された。死亡や転居、4価HPV以外のHPVワクチン接種、がんや生殖器大手術などが判明した4万9,157例の観察を打ち切った。

 POI診断の年齢中央値は26.94歳(IQR 12.68歳)。接種群と非接種群のPOI累積発症率は、19歳時でともに0.011%、34歳時でそれぞれ0.044%と0.047%。研究開始時の受診歴は、接種群と非接種群で同程度だった。

 非接種群に対する接種群のPOIリスクに有意差はなかった(調整HR 0.96、95%CI 0.55~1.68)。無月経と希発月経の複合リスクは9%上昇したものの、非接種群との有意差はなかった(同1.09、0.97~1.22)。接種群のPOIまたは無月経・希発月経リスクは、初回ワクチン接種後経過期間(90日以内/91日~1年以内/1年超)、初回接種年齢(11~19歳/20~34歳)、初回接種時期(2007~11年/2012~16年)によって有意差がなかった。

不妊症の懸念よりも保護効果大きい

 以上の結果から、Hviid氏らは「HPVワクチン接種がPOIリスクの中程度からの大幅な上昇に関連する可能性は低いことが示唆された。しかし、われわれの研究におけるアウトカムの希少性を考慮すると、臨床的に意義のあるリスク上昇の存在をなお排除できない」と結論づけている。

 同氏らは研究の限界として、POIの診断の遅れや見逃し、受診やワクチン接種の状況、経口避妊薬使用が結果に影響を与えた可能性を指摘した上で、研究の意義を強調。「4価HPVワクチン接種と不妊の関連についての保護者の懸念に対処する場合に、臨床および公衆衛生担当者に必要なサポートを提供する。現在、4価HPVワクチン接種とPOIの関連についてのエビデンスはほとんどない。むしろ、生殖能力を低下させる可能性のある感染症から保護する」と述べている。                               

(坂田真子)