現在、国内におけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬の適応は再発・進行乳がんとされ、多くの固形がんでも臨床研究が行われている。金沢大学がん進展制御研究所腫瘍分子生物学研究分野の盛金丹氏らの研究グループは、肝細胞がんおよびKRAS変異肺がん、KRAS変異大腸がんモデルマウスや細胞株を用いた実験でCDK4/6阻害薬の効果を高める併用療法を探索。適切なキナーゼ阻害薬との併用により、高い治療効果が示されたと8月26日付プレスリリースで発表した。詳細はHepatology2021年4月30日オンライン版)に掲載された。

非リン酸化RB1にCDK4/6阻害薬と同様の働き

 CDK4/6阻害薬は、がん抑制遺伝子蛋白質であるRB1のリン酸化を抑制し、細胞周期の進行阻害を介して抗腫瘍効果を発揮する。

 研究グループはまず、肝細胞がん発症との関連が報告されているRBファミリーの機能を消失させたマウスで肝細胞がんモデルを作製。RB1を再発現させたところ、腫瘍のCDK4/6阻害薬であるパルボシクリブに対する感受性を確認した。また、リン酸化されていないRB1(RB7LP)を肝がん細胞株に導入した結果、パルボシクリブと類似の効果を示すことを見いだした。

キナーゼ阻害薬との併用で治療効果が増強

 さらに、RB7LPの効果を高める化合物を探索するため、RB1が常に活性化している状態を模した肝細胞がんなどのがん細胞株を作製しハイスループットスクリーニングを行った。その結果、細胞死を回避させるキナーゼIKKβの働きを弱めるIKKβ阻害薬Bay 11-7082を同定した。肝芽腫および肝細胞がんに対し、パルボシクリブとBay 11-7082を併用投与すると、パルボシクリブ単独投与に比べ高い効果を発揮することが示された。研究グループは、パルボシクリブ単独投与では、核酸合成不全が引き金となりIKKα/βや炎症性サイトカインの転写に寄与するNF-κBが活性化してがん細胞の細胞死を回避し、十分な効果が得られにくいためと考察している。

 また、RB1の機能が保たれたKRAS変異肺がんおよびKRAS変異大腸がんの細胞株を用いて同様の解析を行ったところ、Bay 11-7082またはAKT経路を遮断するAKT阻害薬との併用により、パルボシクリブの効果が増強された(図1)。

図1. 今回発表された新治療法の原理

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RB1野生型がんやKRAS変異がんへの応用に期待

 これらの知見を踏まえ、研究グループは「CKD4/6阻害薬を適切なキナーゼ阻害薬と併用することで治療効果が高まる」としている。また、肝細胞がんやKRAS変異肺がん、KRAS変異大腸がん以外にも、RB1野生型がんや膵がんのようにKRAS変異によって発症するがんなど、幅広いがん種に対する治療への応用にも期待を示している(図2)。

図2. 新治療法の対象疾患

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(図1、2とも金沢大学プレスリリース

(須藤陽子)