日本泌尿器科学会は8月31日、「前立腺癌におけるPARP阻害剤のコンパニオン診断を実施する際の考え方(見解書)」の改訂第2版を発表した。今年(2021年)5月にBRCA変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対するPARP阻害薬オラパリブ(商品名リムパーザ)のコンパニオン診断として、新たにリキッドバイオプシー検査であるFoundationOne Liquid CDxがんゲノムプロファイル(Fd1 Liquid CDx)が承認されたことを受け(関連記事「FoundationOneリキッド、BRCA陽性前立腺がんの第3のコンパニオン診断として承認」)、推奨などが一部変更された。

Fd1 CDxに加え、Fd1 Liquid CDxも推奨

 見解書は、PARP阻害薬オラパリブがBRCA変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対して適応拡大されたことを受け、今年(2021年)1月に第1版が発表された(関連記事「前立腺がんコンパニオン診断で学会が見解」)。

 その後、今年5月にはmCRPCに対するオラパリブ投与のコンパニオン診断としてFd1 Liquid CDxが承認され、既に認められていたBRACAnalysis診断システム(BRACAnalysis)、FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル(Fd1 CDx)に加え、わが国では3種のコンパニオン診断を選択することが可能となった()。

表. わが国で承認されている前立腺がん対するオラパリブのコンパニオン診断

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 検査のタイミングについては「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)の段階からコンパニオン診断を検討し、少なくともmCRPCとなった時点では、積極的にBRCA検査を実施すべき」としている()。

図. コンパニオン診断に至る流れ

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〔表、図とも「前立腺癌における PARP阻害剤のコンパニオン診断を実施する際の考え方(見解書)改訂第2版」を基に編集部作成〕

いずれの検査を行うかについては、前立腺がんにおけるBRCA1/2変異の約半数は体細胞変異であることから(JCO Precis Oncol 2017; PO.17.00029)、第1版では「科学的には、体細胞由来および生殖細胞系列由来のBRCA1/2変異の両方を検出対象とするFd1 CDxを用いてコンパニオン診断を実施することが推奨される」となっている。

 第2版では、BRCA1/2変異に関するFd1 CDxとFd1 Liquid CDxの同等性試験により両検査の陽性一致率は80.9%であったことから、「Fd1 CDxまたはFd1 Liquid CDxを用いてコンパニオン診断を実施することが推奨される」と変更された。

Fd1 Liquid CDxの実施はFd1 CDxが困難または検査不成立時

 ただし、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いた解析では、血中にctDNAが十分に存在していなければ検出できない可能性が示されており、Fd1 Liquid CDxの検査タイミングには留意が必要となる。

 また、コンパニオン診断の対象となる遺伝子変異の種類は、Fd1 CDxでは①置換②挿入/欠失③再編成④ホモ接合性欠失―だが、Fd1 Liquid CDxでは①置換②挿入/欠失③再編成―であるため、第2版では「適切な組織検体がある場合はFd1 CDxによる検査の実施が望ましい」と補足されている。さらに、BRCA1/2変異以外にも、NTRK1/2/3融合遺伝子、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)なども含めて考慮すると付記されている。

 なおmCRPCでは、転移巣の約50%は骨転移であり、強酸性の試薬を用いた酸脱灰を行った場合は組織検査に適切な検体の質が確保できないなど、適切な組織検体の入手に課題がある。そのため、組織採取が困難、組織検体の品質が不十分、早急な検査結果の確認が必要など、医学的な理由により腫瘍組織を検体とした検査が困難な際や、組織検体によるFd1 CDxによる検査が不成立だった場合には全血検体を用いた検査の実施を検討すべきとされた。

 保険診療上の課題としては、Fd1 CDx/Fd1 Liquid CDxはがんゲノムプロファイリング検査(CGP)の機能も有するため、それぞれの目的に沿った形での保険算定に留意が必要となる。Fd1 CDxは患者1人につき算定できるのは1回のみである。Fd1 Liquid CDxは医学的な理由によりFd1 CDxを行うことが困難な場合に算定可能であり、実施困難である医学的な理由を診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載することが求められるという。

(安部重範)