菅義偉首相(自民党総裁)が3日、事実上の退陣を表明した。任期満了に伴う29日の総裁選で再選が見通せなくなったためだ。政府の新型コロナウイルス対応に国民の不満が集中し、内閣支持率は「危険水域」に低迷。衆院選を前に、党内からは「菅首相の下では戦えない」との声が噴出していた。閣僚の一人が首相に直接、退陣を迫ったこともあり、出馬を断念したとみられる。
 首相は政権を取り巻く厳しい状況を踏まえ、「後ろ盾」となってきた二階俊博幹事長の交代を決断。6日に予定していた党役員人事では、知名度の高い石破茂元幹事長らを起用して体制を刷新し、立て直しを図る考えだった。しかし、異例の総裁選前の人事に対しても、党内からは「個利個略」などと反発が出ていた。
 こうした中、首相が信頼を置く側近議員らの間で、選挙基盤の弱い中堅・若手議員を中心に「菅離れ」が進み、総裁選では党員票だけでなく国会議員票も十分な得票は見込めないとの見方が広がった。ある閣僚は、こうした党内情勢を首相に直接伝え、出馬の再考を促した。
 新しい首相を選ぶ総裁選は17日告示、29日投開票の日程で行われる。岸田文雄前政調会長(64)が出馬を表明しているほか、高市早苗前総務相(60)も意欲を示す。一度は出馬を断念した下村博文政調会長(67)は3日、記者団に「改めて同志と相談したい」と語った。
 衆院議員の任期は10月21日に満了する。今月29日の新総裁選出後、首相指名のための臨時国会召集が必要となるため、投開票は公職選挙法の規定で任期満了後にずれ込む見通しだ。
 首相の決断に、自民党幹部は一様に驚きの声を上げた。佐藤勉総務会長は記者団に「1年間首相を支えてきた者として、非常に驚き(何も)申し上げようがない」と落胆をあらわにした。下村氏も「驚いた。ぎりぎりの判断をされた。孤独の中での決断には敬意を申し上げたい」と語った。 (C)時事通信社