ヒトの腸内細菌叢は免疫反応や代謝応答と密接に関わっており、関節リウマチなどの自己免疫疾患や代謝疾患の発症に影響することが知られている。そのため、腸内細菌叢の異常は自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)の発症を誘発する環境因子と考えられてきたが、両者の関係は明らかでなかった。大阪大学大学院遺伝統計学の友藤嘉彦氏らは、SLE患者と健常者の腸内細菌叢をメタゲノム解析し、SLEとの関連を網羅的に検討した結果をAnn Rheum Dis2021年8月25日オンライン版)に報告した。

SLE群では腸内細菌2種が有意に多い

 友藤氏らは、日本人のSLE患者群47例と健常対照群203例を対象に、腸内細菌叢の次世代シークエンサーによるショットガンメタゲノム解析を実施。得られた大規模なゲノム配列情報を用いて、腸内細菌叢の構成とSLEとの関連を網羅的に探索するメタゲノムワイド関連解析を行った。

 その結果、SLE患者の腸内細菌叢では、Streptococcus属のS. anginosusS. intermediusの2菌種が健常対照群より有意に多かった。両菌種がSLEの病態に関与している可能性が示唆された。

 腸内細菌叢の多様性についても比較解析したところ、SLE群では多様性が低下しており、腸内細菌叢の破綻(dysbiosis)が起きていることが示された。dysbiosisは、自己免疫細胞が腸の細胞を攻撃して炎症を引き起こす炎症性腸疾患(IBD)への関与が報告されており(Gastroenterology 2014; 146: 1489-1499)、SLEの病態形成との関連も示唆された。

 さらに、腸内細菌叢由来の遺伝子や、生体活動に持続に必要な化学反応などの生物学的過程を示すパスウェイについても比較したところ、SLE群では酸化還元反応に関与する遺伝子の増加、硫黄代謝、鞭毛の形成に関与するパスウェイの変動が生じていることが分かった。

血中代謝物を介し異常な免疫反応を活性化か?

 腸内細菌叢は血中代謝物の濃度に影響を及ぼすことが知られていることから、友藤氏らは、メタゲノム解析の結果と質量分析計で測定した血中代謝物情報を統合し、腸内細菌叢と血中代謝物との関連も検討した。

 その結果、SLE群で有意に多かったS. intermediusと、炎症との関連が報告されている代謝物であるアシルカルニチンに正の相関が見いだされた。このことから、S. intermediusがアシルカルニチンを介し、異常な免疫反応を活性化させている可能性が示唆された。

 同氏らは、今回の研究により同定された菌種、遺伝子、血中代謝物についてさらなる検討を進めることで、「SLEの新たな治療標的・バイオマーカーの開発につながることを期待する」としている。

(中原将隆)