菅義偉首相が退陣表明に追い込まれた。新型コロナウイルス感染拡大に翻弄(ほんろう)され、打つ手打つ手が「後手」「小出し」批判にさらされた1年間だった。21都道府県にまで拡大した緊急事態宣言は出口戦略も描けず、首相が目指した「日常生活の回復」は道半ばだ。
 「後手後手と批判は頂くが、対策は慎重にやれと法律に書いてある」。加藤勝信官房長官は3日、首相退陣が確定した後の記者会見で、菅政権のコロナ対応はしばしば後手に回ったのではないかと指摘され、こう反論した。
 首相は昨年9月の就任会見で、コロナ対策と経済活動の両立を掲げた。肝煎りの経済下支え策「Go To」キャンペーンを自ら旗振り役として推進したが、感染拡大局面で停止の判断が遅れたと批判を浴びた。
 今年2月にはコロナ対策の特別措置法を改正し、宣言に準じた対策が可能な「まん延防止等重点措置」を新設した。しかし、いったんは宣言を解除した東京都などの人口密集地で十分な効果を得られず、4月下旬に3回目の宣言を発令。「17日間」の短期で抑え込みを図ったが、その後も対象地域の拡大や期間延長を余儀なくされ、宣言がようやく解除できたのは6月下旬だった。
 7月には感染力の強いデルタ株が広がり、宣言は4回目に。だが、国民の自粛疲れで効果は薄れ、政府の要請に反して酒類の提供を再開する飲食店が続出した。不要不急の外出自粛を呼び掛ける一方、東京五輪やパラリンピックを開いたことも、整合性を欠くメッセージと受け取られた。
 首相が対策の切り札と見定めたワクチン接種は、約束通り1日100万回超を達成したという。供給不足などの混乱で自治体や職域接種を担う企業・団体とのあつれきを生じたものの、2回接種した人は既に総人口の4割を超えたとされる。それでも全国的な感染拡大は勢いが衰えず、期限とする12日までの宣言解除は危ぶまれている。
 コロナ禍の出口への道筋を示せない菅政権に国民の不満は鬱積(うっせき)し、報道各社の8月の世論調査では内閣支持率が「危険水域」とされる30%割れが相次いだ。出口戦略について、政府は「日常生活や社会経済活動の回復に向けて議論する」(加藤氏)と繰り返しているが、残りわずかとなった首相の在職期間で進展は見通せない。 (C)時事通信社