東京五輪・パラリンピックのメイン会場となった国立競技場は、障害者らへの配慮から多様なトイレを設置するなど「世界最高のユニバーサルデザイン(UD)」をうたう。大会終盤、時事通信の記者が車いすユーザーの社員と場内を歩くと、新型コロナウイルス対策への対応で一部、戸惑うこともあったが、随所にきめ細やかな配慮を感じた。
 2日、雨が降る中、最寄りの都営地下鉄大江戸線国立競技場駅から手荷物検査場に向かう。手動の車いすに乗る社員にとって傘を差すのは難しい。屋根がない中、約100メートルの緩やかな上り坂を、ぬれながら力を込めて車輪を回した。金属探知機ゲートは、幅約60センチの車いすがぎりぎり通れる大きさだった。
 報道関係者用のゲートから場内へ。1階の車いす用観客席まではわずかな距離で、段差や坂もなくスムーズに移動できる。同伴者用の観客席もあり、2人で一緒に観戦できる設計となっていた。
 近くで、車いすに乗ったモーリシャス選手団事務総長の女性(75)がフィールドの陸上競技を眺めていた。「(場内は)段差もなく動くのに困らない」と満足そうだ。
 障害者への配慮を強く感じたのはトイレだ。車いす専用は、ボタンでドアを開閉する仕組み。手動での開閉だったという前回リオデジャネイロ大会の会場も知る社員は「国立競技場のほうが使いやすい」。一般用にも車いす利用者向けの広めの個室が男女それぞれに設けられていた。
 コロナ対策の消毒液は、足元のペダルを踏んで出すタイプのスタンドに設置されていた。車いすでは使いにくく、社員はボトルのポンプを手で強く押して液を出した。
 場内で働く車いすの男性(46)=静岡市=は「使えるトイレが十分にある」。地元の駅などはバリアフリー化が進んでいないといい、「大会を機にさらに広まってほしい」と話した。 (C)時事通信社