フランス・Imagine InstituteのPaul Bastard氏、広島大学大学院小児科学教授の岡田賢氏らの国際共同研究グループは、新型コロナウイルス(COVID-19)患者と健康人を対象にI型インターフェロン(IFN)に対する中和抗体の保有率を調査。その結果、COVID-19最重例や死亡例で抗Ⅰ型IFN抗体の保有率が高く、重症化因子であるとの結果をSci Immunol2021; 6: eabl4340)に発表した。

COVID-19患者5,857例、健康人3万4,159例を分析

 IFN-αやIFN-βなど抗ウイルス系サイトカインであるⅠ型IFNは、体内にウイルスが侵入した際に誘導され、mRNAや蛋白質の合成を阻害することでウイルス複製を抑制する。ところが、先天性の異常などにより、Ⅰ型IFNの働きを中和する自己抗体がつくられる場合がある。全身性エリトマトーデスや自己免疫性多内分泌腺症候群1型(APS-1)の患者でこの現象が見られることが報告されている(J Immunol 1982; 129: 1-3PLoS Med 2006; 3: e289)。

 Bastard氏らは昨年(2020年)、COVID-19の最重症患者987例、無症候または軽症患者663例、健康人1,227例の検体を収集し、IFN-α2、IFN-ωに対する中和抗体の血中濃度を測定。抗体保有率は最重症患者の10.2%に対し、無症候・軽症患者で0%、健康人では0.03%であったことを報告している(Science 2020; 370: eabd4585)。抗Ⅰ型IFN抗体の存在が、COVID-19重症化のリスクであることを示す結果だった。

 これを踏まえて今回、38国で検体を収集し、より大規模な追試を行った。COVID-19患者5,857例を重症度別に、①最重症例〔人工呼吸器を要する、または敗血症性ショックを伴う、または集中治療室(ICU)で全身管理を要する者)3,595例(死亡1,124例を含む)②重症例(低流量酸素システムを要する者)623例③無症候または軽症例1,639例―の3群に分類した。健康対照群は3万4,159例であった。

死亡例の19%、最重症例の14%が中和抗体を保有

 検討の結果、抗Ⅰ型IFN抗体の保有率は、最重症例で13.6%、重症例で6.5%、無症候または軽症例で1%だった。さらに、最重症例のうち死亡した1,124例について解析したところ、保有率は18.5%であった(図1)。年齢別に死亡例を見ても全ての年齢層で保有率が高かった。一方、最重症例では高齢であるほど保有率が上昇する傾向が認められた(図2)。

図1. COVID-19死亡例における年齢別に見た抗Ⅰ型IFN中和抗体陽性率

※灰色の範囲は標準誤差を示す。

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図2.COVID-19最重症例における年齢別に見た抗Ⅰ型IFN中和抗体陽性率

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健康人でも抗体を確認

 健康人においてもごく少数の保有例が確認され、70歳未満で0.18%、70~79歳で1.1%、80歳以上で3.4%と加齢とともに上昇していたが、85歳を過ぎると低下する傾向が見られた(図3)。

図3. 健康人における年齢別に見た抗Ⅰ型IFN中和抗体陽性率

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(図1~3とも Sci Immunol 2021; 6: eabl4340)

 なお、岡田氏はMedical Tribuneの取材に対し、次のようにコメントした。

「現時点では抗Ⅰ型IFN抗体が産生される理由は不明だが、これを保有する健康人は、普段は健康に過ごしていても潜在的にCOVID-19重症化リスクを有すると考えられる。また、COVID-19以外にも、同抗体保有例において黄熱ワクチン接種で重篤な感染症を呈した症例が報告されている(J Exp Med 2021; 218: e20202486)。抗Ⅰ型INF抗体の存在は、他のウイルスに対してもなんらかの易感染性を生む可能性はある」

(平吉里奈)