米国予防接種諮問委員会(ACIP)による、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンのリスク・ベネフィットに関する最新の分析結果が米疾病対策センター(CDC)のMMWR Morb Mortal Wkly Rep2021; 70; 1094-1099)に公表された。ワクチン有害事象報告システム(VAERS)において、1回接種タイプのジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製アデノウイルスベクターワクチン接種後にギラン・バレー症候群(GBS)および血小板減少症を伴う血栓症(TTS;thrombosis with thrombocytopenia syndrome)が、ファイザー製およびモデルナ製メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン接種後に心筋炎が、それぞれ特定の層で生じたことが報告された(関連記事「ギラン・バレー、トジナメランで再発せず」)。

J&J製で50~64歳男性にGBS、30~49歳女性にTTS

 ACIPの最新分析によると、米国では今年(2021年)6月30日の時点で18歳以上の約1,260万例がJ&J製ワクチン接種、約1億4,100万例がmRNAワクチン2回目接種を受けていた。

 VAERSに2021年2月27日~6月30日に報告されたJ&J製ワクチン接種後のGBS発症は100例(年齢中央値57歳、男性61%)。ワクチン接種から発症までの期間の中央値は13日で、98%が接種後42日以内に発症しており、入院が95%、ICU入室が10%、死亡が1例だった。

 GBS発症率は全体でワクチン接種100万例当たり7.8例と算出され、年齢・性別では50~64歳の男性で最も高かった(100万例当たり15.6例)。

 2021年7月8日までに報告されたJ&J製ワクチン接種後のTTS発症は38例で、うち4例が死亡。TTS発症率は全体でワクチン接種100万例当たり3.0例と算出され、30~49歳の女性(100万回当たり8.8例)で最も高かった。

 また、2021年6月30日時点で、mRNAワクチン2回目接種後の心筋炎発症は497例だったが、心筋炎による死亡はなかった。心筋炎発症率は全体でワクチン2回目接種100万例当たり3.5例と算出され、18~29歳の男性で最も高かった(100万例当たり24.3例)。

男女問わず全年齢で、有害事象リスクよりベネフィットが大きい

 分析対象とした18歳以上の全例において、ワクチン接種のベネフィット(COVID-19発症およびCOVID-19による入院、ICU入室、死亡の回避)がリスク(ワクチン接種後のGBS、TTS、心筋炎の発症)を上回った。ただし、GBSは50~64歳の男性、TTSは30~49歳の女性、心筋炎は18~29歳の男性というように、特定のサブグループで発症例が多かったため、「リスクとベネフィットのバランスは、年齢や性により異なる」と結論づけた。

 例えば50~64歳の男性では、100万例のJ&J製ワクチン接種/mRNAワクチン2回目接種により接種後120日間にCOVID-19による入院が1,800例、ICU入室が480例、死亡が140例それぞれ回避されたのに対し、14~17例がGBS、1~2例がTTS、1例が心筋炎を発症したと推定された()。

図. ワクチン接種によるベネフィットとリスク(100万回接種当たりの推定例数)

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MMWR Morb Mortal Wkly Rep2021; 70; 1094-1099

 以上の結果から、ACIPは「18歳以上(ファイザー製ワクチンは12歳以上)の全例に対し、FDAが緊急使用を許可した全てのワクチンの接種を推奨する」と結論。「引き続きワクチン接種後の重篤な副反応を監視し、これらの副反応に関する情報を広めることが極めて重要であり、可能であれば状況に応じてワクチンの種類を選べるようにすべきである」としている。

(太田敦子)