心筋梗塞(MI)または高リスク冠動脈疾患で入院した患者への早期インフルエンザワクチン接種は、12カ月後の転帰を有意に改善させることが国際多施設共同二重盲検ランダム化比較試験(RCT)IAMI trialにより明らかにされた。スウェーデン・Örebro University HospitalのOle Fröbert氏らが8カ国30施設で行った同試験の結果を欧州心臓病学会(ESC 2021、8月27~30日、ウェブ開催)で報告した。

入院から72時間以内に接種

 インフルエンザ流行期は、非流行期よりも心血管死亡者が増加する。心血管イベントに対するインフルエンザワクチン接種による保護効果が観察研究で示唆されており、この知見は3件の単一施設におけるRCTで支持されている。米心臓協会(AHA)/米心臓病学会(ACC)およびESCの再発予防ガイドラインで心疾患患者に対するインフルエンザワクチン接種はクラスⅠ、エビデンスBの推奨としているが、実施率は低く、接種時期は明らかでない。

 IAMI trialでは、2016年10月~20年2月のインフルエンザ4シーズンに8カ国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ラトビア、英国、チェコ、バングラデシュ、オーストラリア)30施設で参加者を登録。参加者は侵襲的な冠動脈手術または入院から72時間以内にインフルエンザワクチンまたはプラセボを接種する群に1:1でランダムに割り付けた。主要評価項目は12カ月後の全死亡、MI、ステント血栓症の複合とした。副次評価項目は12カ月後の全死亡、心血管死、MIとした。

 同試験では当初患者4,400例を目標に登録していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが発生したため、2020年4月7日に2,571例(目標の58%)が登録された時点でデータ安全監視委員会(DSMB)により早期中止された。

 解析対象はワクチン群1,272例、プラセボ群1, 260例。両群の背景に差はなく、平均年齢は60歳、男性が約80%、ST上昇型急性MI(STEMI)が約50%、非STEMIが約45%、安定冠動脈疾患はワクチン群6例、プラセボ群2例のみ、糖尿病は約20%だった。

複合主要評価項目を28%抑制

 複合主要評価項目の発生率は、ワクチン群の5.3%(67例)に対しプラセボ群では7.2%(91例)とリスクが28%有意に低下〔ハザード比(HR)0.72、95%CI 0.52~0.99、P=0.040、〕した。

図. 複合主要評価項目の累積発生率

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(ESC2021プレスカンファレンス資料を基に編集部作成)

 副次評価項目の発生率は、全死亡がワクチン群2.9%(37例)、プラセボ群4.9%(61例)、心血管死はそれぞれ2.7%(34例)、4.5%(56例)で、いずれのリスクもプラセボ群に比べワクチン群で41%有意に低下した(全死亡: HR 0.59、95%CI 0.39~0.89、P=0.010、心血管死:同0.59、0.39~0.90、P=0.014)。MIの発生率に両群で差はなかった〔ワクチン群2.0%(25例)vs. プラセボ群2.4%(29例)、HR 0.86、95%CI 0.50~1.46、P=0.57〕。

 全身性の副反応(悪寒、発熱、頭痛、筋肉痛、不眠)は低率で両群に差はなかった。注射部位の疼痛(12.1% vs. 6.5%)、発赤(6.8% vs. 2.2%)、腫脹(6.3% vs. 1.5%)、硬結(7.2% vs. 1.8%)などはワクチン群で有意に高率だった(いずれもP<0.0001)。重篤な有害事象はまれで、症状の種類と発現率に両群で差はなかった。

MI後の院内治療に

 以上の結果を踏まえ、Fröbert氏は「MIまたは高リスク冠動脈疾患で入院した患者へのインフルエンザワクチン接種は、12カ月後の全死亡、MI、ステント血栓症の複合リスクおよび全死亡と心血管疾患死のリスクを有意に低下させた」と結論。「現在、インフルエンザワクチン接種は急性MI患者に対する病院での標準的ケアには含まれないが、今回の知見から、MI後の院内治療の一部としてワクチン接種を考慮すべきであることが示唆された」と付言した。さらに「インフルエンザは心血管疾患と関連しており、インフルエンザワクチン接種によりインフルエンザと心血管死を予防できることから、心血管疾患患者は毎年接種すべきである」と述べた。

(大江 円)